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「謎の旅人」と育てるブランド チャーリー・ヴァイス

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「謎の旅人」と育てるブランド チャーリー・ヴァイス

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店頭は数週間単位で陳列が変わる。11月末は「チャーリー・ヴァイスが旅をするために必要なもの」というテーマでそろえた小物類が並んだ=2014年11月26日、東京都新宿区(野村成次撮影)  【Fashion Addict】

 「チャーリー・ヴァイスって誰?」。東京・新宿の伊勢丹新宿本店メンズ館の一画にある「チャーリー・ヴァイス」は、謎の旅人チャーリーが愛するこだわりの品を集めたというブランド。国籍、年齢、職業不明の趣味人で世界中を飛び回っているという設定で、放送作家・小山薫堂(こやま・くんどう)さんが出演するテレビ番組で企画されたのが始まり。小山さんをはじめとする自称「チャーリーの友人たち」がさまざまな語り口で本人を紹介、遊び心満載の企画を提案することでブランドが育っていくという、ユニークな経過をたどっている。

 12月中旬のある夜、東京タワーに程近い都内のレストランで、チャーリー主催のクリスマス・パーティーが開かれた。伊勢丹新宿本店の顧客を中心に、地方からの参加者も含め総勢20人あまり。ゲストの写真家ハービー・山口さんは「僕がチャーリーに会ったのは、1980年代初めのロンドン。独特の美意識を持っていてルックスが良く、写真を撮らせてもらった」とエピソードを紹介した。

 遅れて参加する予定だったチャーリーは結局、現れず、本人からという「新幹線が遅れて間に合わない」というお詫びのメッセージが入った。

 上質楽しみ、心豊かに

 ブランドの誕生は2年前で、小山さんが代表をつとめる企画会社の副社長の誕生祝いがきっかけだった。からかい半分の「チャらい(ノリが軽い)バイス・プレジデント(副社長)」の語呂が「チャーリー・ヴァイス」へと進化。小山さんが出演しているBSフジの深夜番組「東京会議」で、実在のブランドとして育てることになる。

 小山さんやハービーさんら親しい友人たちが本人と相談しながら「こだわりの品」を開発するという設定でスタート。視聴者からオリジナルバッグのデザインなどを募集しているうち「チャーリーってどんな人?」という想像が膨らんでいき、少しずつブランド像が形作られていった。

 この流れに三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長が着目。昨年9月に伊勢丹新宿本店メンズ館の一画に常設のギャラリーを設けた。チャーリーの友人たちがセレクトしたというこだわりの商品を紹介。シャンパンやビンテージ物のグラス、絶妙な味わいを醸し出す国産のだし昆布など、大人向けの趣味の品々が展示・販売された。

 「上質のものを楽しみ、心豊かに過ごすライフスタイルを提案すると同時に、チャーリーを介したお客さまのコミュニティーを作りたかった」と担当の成川央子さん。今年4月には、1日のエープリル・フールに生まれたチャーリーの誕生パーティーが、本人不在のまま都内で開かれた。ほか店頭ではワインテイスティングからポマードの使用法、盆栽の育て方など、こだわりのイベントを不定期で開催している。

 9月からはオリジナルメンズ衣料の製造・販売を本格的に開始した。長野県の契約先工房で作るニット素材のジャケットや、デニムの名産地である岡山県で織った生地を東北で縫製し、再び岡山で仕上げたジーンズ(4万9680円)など。包帯生地を使ったパンツはチャーリーが「通気性が良く履き心地抜群」と絶賛しているとか。

 大勢で「人物像」作る

 小山薫堂さんは11月、日本メンズファッション協会が主催する今年のベストドレッサー賞を受賞、式典で着たスーツは「チャーリーにアレンジしてもらった」という。ほかチャーリーの素顔については「3年前にイタリアンレストランで一緒に食事をした」(大西社長)、「1989年にヨーロッパの彼の家でテムズ川で捕れたサケのパイを食べた」(音楽家の千住明さん)などさまざまな文化人、知識人が友人という設定で発言。服飾史家の中野香織・明治大学特任教授は「虚構の人物に対するイメージが広がって、ブランドが育っていく貴重なケース」と分析する。

 伊勢丹新宿本店では今後、オリジナル衣料の種類を増やし、他のブランドとのコラボレーションも検討する。「『和』で何かをあえて新しいものを作る才能にあふれている」(小山さん)というチャーリー。果たして本人が姿を見せる日は来るのか。自分自身がブランドを育てられる面白さ、仲間のできるうれしさ、そしていつか会えるかもしれないチャーリーの登場を、ワクワクしながら待つ楽しさも提供してくれる、大人のブランドだ。(文:藤沢志穂子/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS

チャーリー・ヴァイス

東京都新宿区新宿3の14の1 伊勢丹新宿本店メンズ館8階。(電)03・3352・1111。営業時間、休日は伊勢丹新宿本店に準ずる。

 ※価格は税込みです。

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