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石油マネーで「温暖化否定」 寄付1.4億円公表せず論文 米学者を調査
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米ノースダコタ州の油田で稼働する油井。人間の経済活動による地球温暖化を否定する米学者が、石油業界から多額の寄付金をもらっていたことが発覚し波紋が広がっている=2014年12月17日(AP) 地球温暖化は人間の活動が原因ではなく太陽の活動によるものだと主張してきた米国の著名科学者が、石油業界から多額の寄付金を受け取っていたことを隠して論文を発表していたと報じられ、雇用先の米国立スミソニアン協会が26日、内部調査を開始した。寄付金は10年間で総額120万ドル(約1億4000万円)に上り、利害関係者からの寄付を公表していなかったことが倫理規定に違反するという。“太陽活動説”を唱える科学者は少なくないが、その背後で温暖化の“主犯”とされた石油業界が、脱化石燃料の動きを阻止しようとロビー活動を展開し、うごめいている一端が浮かび上がった。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が環境保護団体グリーンピースの調査に基づく疑惑を21日に報道。これを受け、スミソニアン協会が26日、公式サイトで調査開始を表明した。
問題の科学者は、1966年生まれのマレーシア系米国人で、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターに所属する地球科学専攻のウィリー・スーン氏。報道によると、スーン氏はこれまでに執筆した11の論文で寄付の事実を公表せず、うち8つの論文が公表先の学術誌の倫理規定に違反するという。
ハーバード・スミソニアンの責任者、チャールズ・R・アルコック氏はニューヨーク・タイムズ紙に、「不適切な行為で、直ちに人事処分を下したい」と語り、疑惑を認めた。一方、メディア嫌いで知られるスーン氏は完全黙秘を貫いている。
グリーンピースの調査によると、スーン氏は2010年に共和党の有力支持者で大統領選にも隠然たる影響力を持つ石油業界の大富豪、チャールズ・G・コーク氏がCEOを務めるエネルギー企業から6万5000ドル、コーク氏の慈善財団から23万ドルの援助を受けていた。このほか米電力大手サザン・カンパニーの子会社が計40万9000ドルを、米石油大手エクソン・モービルも多額の寄付をしていた。またスーン氏が03年に共同発表した論文の研究費のうち5%に当たる5万3000ドルは米石油協会(API)が拠出していたという。
スーン氏はこれまでの論文で、「20世紀の温暖化は過去何世紀にもわたる気温の変動に比べれば異常ではない」と分析。「温暖化は太陽活動によるもので、化石燃料の使用で排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが原因ではない」と主張してきた。07年には「北極の白クマは人間活動による温暖化で脅威にさらされているわけではない」とする論文も出している。
こうしたスーン氏の論文に、「地球温暖化はデマだ」との主張で知られるオクラホマ州選出のジェームズ・M・インホフェ上院議員(80)ら石油業界から多額の献金を受ける共和党議員が着目。民主党のオバマ政権が進める脱化石燃料政策を攻撃する材料として、議会証言などに論文の文言がそのまま引用されていたという。
論文執筆者にも大金をばらまいていたことが発覚し、石油業界の“マッチポンプ”に今後批判が高まるのは必至。民主党は、同じような「温暖化否定論者」の資金源を解明するため、大学や企業、業界団体に協力を求める要望書を送付し反撃を始めた。
スミソニアン協会は調査開始に当たりこうコメントした。
「温暖化は人間活動によるものです。われわれはスーン氏の結論を支持していません」(SANKEI EXPRESS)