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英博物館の「顔」変更で大論争 恐竜骨格標本、17年からクジラに

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英博物館の「顔」変更で大論争 恐竜骨格標本、17年からクジラに

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ロンドン自然史博物館を訪れ、玄関ホールに展示されたディプロドクスの骨格標本(中央)を見学する子供たち=2015年1月29日、英国・首都ロンドン(ロイター)  年間約500万人が訪れる英国のロンドン自然史博物館が、玄関ホールで展示中の恐竜、ディプロドクスの骨格標本を2017年から哺乳類ギャラリーにあるシロナガスクジラの骨格標本に変更すると発表し、物議を醸している。1979年以来、35年間にわたって現在の場所で展示されてきたこの恐竜の骨は“ディッピー”の愛称で親しまれ、子供たちの人気の的。しかし、実はレプリカであるため、博物館側は本物の標本に接することで科学への正しい理解を深めてもらいたいと説明する。それでも幼少時からディッピーに慣れ親しんできたロンドンっ子にはどうにも納得がいかないようだ。

 レプリカ、本物は米に

 英BBC放送や英紙ガーディアン(いずれも電子版)などによると、ディプロドクスは約1億5000万~1億4700万年前の北米大陸に生息していた大型の草食性恐竜で、1878年にその存在が確認された。

 骨格標本の基になった化石は米西部ワイオミング州で1898年に鉄道労働者が偶然に発見。英スコットランド生まれの大富豪で篤志家のアンドリュー・カーネギー氏(1835~1919年)が自費でレプリカを作り、7年後の1905年、これをロンドン自然史博物館に寄贈した。本物は米ペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギー自然史博物館に置かれている。

 この恐竜の骨格標本は長さ32メートルと巨大なこともあり、玄関ホールでの展示が始まって以来、約130年の歴史を持つこの博物館で最も人気のある展示物の一つになっていた。

 絶滅危機強調狙う

 ところが博物館側は29日、「これから10年計画で実施する新戦略の一環」として突然、今回の展示変更を発表した。

 博物館のマイケル・ディクソン館長は、現存動物で最大といわれながら、絶滅の危機にあるシロナガスクジラの標本を博物館の顔である玄関ホールに展示することで、多くの生物が絶滅の危機に直面している現状を訴える狙いがあるとし、「重要かつ必要な展示変更」だと強調した。

 ディッピーに代わって博物館の顔となるシロナガスクジラの骨格標本はメスのもので、長さ25.2メートル。捕鯨船と格闘の末、逃げ込んだアイルランドのウェックスフォード港で死亡し、博物館が1891年に展示のために買い取った。

 恐竜の方は人気者とはいえ、レプリカ。人類や地球が直面している諸問題を展示物によって提起することも博物館に課された重要な仕事なだけに、地球温暖化などで絶滅危機にあるシロナガスクジラへの展示替えは理屈としては正しい側面がある。

 唐突決定に猛反発

 しかし、この唐突な決定に英国では多くの人々が反発。ガーディアン紙電子版の記事のコメント欄には「過去最悪のニュースだ」「いくつかの展示物は世代から世代へと継承されるべきだ」「博物館と恐竜との思い出は幸せな日々を思い出させてくれる」といった否定的な書き込みが多く、ネット上では反対運動も起きている。

 さらに英高級紙インディペンデント(電子版)は、今回の展示替えは、ディッピーより一回り小さいクジラの骨格標本を天井からぶら下げることで玄関ホールの空きスペースを拡大し、イベントなどでもうけようとする博物館側の金もうけ策(博物館側は否定)との見方を報じた。ディッピーの今後については、別の形での展示のほか、英国各地の展示会に貸し出すことなどが検討されているという。(SANKEI EXPRESS

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