ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
個体数戻った「Blue Whale」 米カリフォルニア沖で19世紀レベルに
更新
一度は絶滅寸前まで減少したカリフォルニア・シロナガスクジラの数が捕鯨による乱獲前の19世紀のレベルにまで回復し、自律回復可能な個体数に戻ったことが、米ワシントン大学の研究チームによる調査で8日までに分かった。調査によると、太平洋の東側に生息するカリフォルニア・シロナガスクジラの個体数は約2200頭で、捕鯨が行われる前の水準の約97%に相当するという。捕鯨禁止など人間の努力によって自然が回復し得る好例として、ロイター通信や英BBCなどの欧米メディアが大きく報じた。
シロナガスクジラは最大で体長約33メートル、体重約190トンに達する地球上最大の動物で、英名は「BlueWhale」。先日、南米アルゼンチンで化石で発見された世界最大級の草食恐竜でも体長は約26メートルで、現存する生物で最大であるばかりか、恐竜などかつて存在した全ての生物と比較しても、最大の生物になるという。
その巨体ゆえ、他の生物に襲われることもなく、当初は全世界で約30万頭いたと推定されている。ところが19世紀に入り、造船技術が向上すると、灯火用の燃料油やマーガリンの原料など多用途に使える鯨油を求めて人間による捕鯨が始まり、巨大で一度に大量の油を採取できるシロナガスクジラは乱獲されるようになった。
BBCによると、南極海では捕鯨が禁止される1966年までの間に34万6000頭が殺され、カリフォルニア・シロナガスクジラが生息する太平洋はそれよりは少ないものの、1905~71年の間に約3400頭が殺されたとみられている。
カリフォルニア・シロナガスクジラはアラスカ湾から中央アメリカのコスタリカにかけて広く分布し、プランクトンやイワシなどの餌を追って時に米西海岸に近づくことがある。
カリフォルニア・シロナガスクジラの太平洋での捕獲数の大半はロシアの船団によるものとみられているが、旧ソ連の「鉄のカーテン」による情報統制の下、最近まで科学者はその数すら知ることができなかった。
旧ソ連による捕鯨の全容が分かれば、カリフォルニア・シロナガスクジラを自力で再生させるためのデータとすることができるが、現在でも捕獲された場所や捕獲時の個体の体長などの詳細な記録は明らかにされていない。ロシアの閉鎖的な体質が原状回復を阻む「壁」となっている。
カリフォルニア・シロナガスクジラの個体数の自律回復に向け、研究者のもう一つの心配事となっているのが、カリフォルニア沿岸の海岸で起きているクジラたちの事故死だ。米西海岸では毎年、船との衝突で11頭以上のカリフォルニア・シロナガスクジラが死んでおり、個体数の回復を鈍化させている主要な要因になっていると研究者らは指摘している。
研究チームを主導したワシントン大のコール・モナハン氏はロイター通信の取材に「われわれの研究結果は、これによってカリフォルニア・シロナガスクジラの保護をする必要がなくなったということを意味するものではない」と前置きした上で、クジラの保護活動を続けていく必要性を次のように強調した。
「カリフォルニア・シロナガスクジラの個体数はわれわれが捕獲をやめ、モニタリングを行ったから回復した。もしそうしていなかったら、他の絶滅に瀕(ひん)しているシロナガスクジラと同じようにカリフォルニア・シロナガスクジラも絶滅のふちに立っていたことだろう」(SANKEI EXPRESS)