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アマゾンの神秘 「ピンクイルカ」守れ 「殺害」常態化 ブラジル政府、保護へ対策

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アマゾンの神秘 「ピンクイルカ」守れ 「殺害」常態化 ブラジル政府、保護へ対策

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ブラジル・アマゾナス州マナウス(州都)  海水浴シーズンただ中のブラジル北部マナウスのアマゾン川沿いのビーチに、空気で膨らませた巨大なカワイルカの人形が登場した。イルカといえば、通常海にすむものだが、淡水のアマゾン川には古くからピンク色のカワイルカが生息。アマゾン川誕生時に陸封されたといわれ、地元民に神格化され保護されてきた。しかし、ロイター通信によると、最近では違法な殺害が常態化しており、これを食い止めようとして種の保存を唱える団体が観光客でにぎわうビーチに人形を浮かべたのだという。

 生きた化石

 アマゾンカワイルカの体長は雄約2.8メートル、雌約2.3メートル。カワイルカとしては大きな部類に属し、体重は100~160キログラムに達する。学術的には太古の原始的なクジラと同じ特徴を備えているとされ、「生きた化石」とも呼ばれている。

 体の色は明るいピンク色を中心に、茶色やクリーム色のものもおり、さまざま。他のイルカとは異なり、頸椎(けいつい)の骨が互いに固定されていないため、頭を180度以上回転させることができ、にごったアマゾン川で獲物をより広範囲で探し出し、捕獲するのに優れている。

 女性たぶらかす?

 淡いピンク色の体と他のイルカにまねのできない神秘的な動きから、地元では古くから言い伝えによって神格化され、カワイルカを殺すことはタブー視されてきた。特に、ピンクのイルカは夜中に男性に化け、川辺に住む女性を誘惑して妊娠させるという伝承があり、アマゾンでは父親の分からない子は「ピンクイルカの子」と言われる。

 他のカワイルカが絶滅の危機に瀕(ひん)する中、こうした伝承に保護されてアマゾンカワイルカは最も安定して生息している種といわれてきた。ただ、アマゾン川で漁をする漁師が網に掛かった魚をカワイルカに奪われまいとしてひそかに殺していることは昔から知られ、近年では観光客に人気のナマズ漁の餌にする目的で故意に殺されるケースが目立ってきているという。

 業を煮やしたブラジル政府は今年6月、カワイルカを保護するためナマズ漁を一時的に禁ずる方針を打ち出した。

 中国では絶滅か

 巨大なカワイルカの人形が現れたマナウスはブラジル北部アマゾナス州の州都で、アマゾン観光の中心地。「免税都市」に指定されたことで日本、韓国、米国などの外国企業が進出し、近年、経済発展が著しい。

 今年ブラジルで開催されたサッカー・ワールドカップ(W杯)では国際サッカー連盟(FIFA)の要望で約300億円を投じてスタジアムが建設され、1次リーグの会場として利用された。

 カワイルカをめぐっては、工場排水による河川の汚染などで中国に住むヨウスコウカワイルカが絶滅したとたびたび報じられ、インドなどに住むインドカワイルカも絶滅の危機がささやかれている。経済的に同じ新興5カ国(BRICS)に属するブラジルも安閑としてはいられない事情がある。(SANKEI EXPRESS

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