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【アラスカの大地から】清らかな冬 歓喜の時を待つ

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【アラスカの大地から】清らかな冬 歓喜の時を待つ

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かまくらの中から見たマッキンリー山(6168メートル)。悪天候だと目の前数メートルさえ見えなくなる=2014年3月19日、米アラスカ州(松本紀生さん撮影) 2014・1・29

 マッキンリー山を望む氷河上に小型飛行機で降り立つ。雪と氷と岩に囲まれた、これ以上ない清らかな風景。冷えきった空気に気が引き締まる。今年も冬が始まった。

2・1

 毎日朝までヘッドランプをつけて作っていたかまくらがようやく完成した。キャンプ中最も安堵する瞬間。これから50日間をここで過ごす。

2・6

 この冬初めての吹雪。辺りが完璧に真っ白になり、目の前のかまくらの輪郭すら見えない。吹きつける雪に眼球が痛い。

2・16

 連日の雪かきで左肩が痛み始める。医者からおそわったストレッチで何とかしのぐ。

2・27

 満天の星空と月光に照らされたマッキンリー山を独り占めする。神々しいほどの絶景だが、最後のピースだけがそろわない。オーロラだ。歓喜の瞬間は果たしておとずれるのだろうか。

 ≪光の乱舞は現れず 来年にお預け≫

3・2

 21時に北の空がぼんやりと明るくなる。ライトアップされた霧のよう。午前1時にはカーテンの形となり、午前5時を過ぎても揺れ続けていた。惜しむらくは月光がなく、山がきちんと見えなかったことだ。

3・11

 かなりの積雪。風で運ばれた雪がかまくらの入り口を埋めてしまう。スコップを使って降りしきる雪と格闘していると、自然と闘志が湧いてくる。

3・18

 雲の切れ間からうっすらと緑の光が見える。宇宙からなら大きなオーロラが見えているのだろうか。

3・20

 小型飛行機が迎えに来た。もう十分にトライしたという思いと、でももう少しいたいという気持ち。結局オーロラは幾晩かは現れたが、月光に浮かび上がるマッキンリー山を覆い尽くす光の乱舞は見られなかった。アラスカも今日から暦の上では春。また来年がんばろう。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS

 ■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退後、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。2004年夏、マッキンリー山登頂。著書に「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー「アラスカ・フォトライブ」を開催。matsumotonorio.com

 【ガイド】

 写真家の松本紀生さんが撮影したアラスカの大自然や動物たちの写真を巨大スクリーンに映し出す「フォトライブ」を開催します。マッキンリー山上空に降り注ぐオーロラや躍動するザトウクジラ、原野を埋め尽くすカリブーの群れ…。ダイナミックな映像をバックに、撮影時のエピソードを散りばめながら松本さんのユーモアあふれるトークであなたをアラスカへと誘います。

 ■煌めきフォトライブ 松本紀生の「アラスカ・オーロラ夢紀行III」は5月10日(土)。午後の部(90分)は、午後1時開演、夜の部(120分)は午後5時半開演。入場料は午後の部は大人2800円(中学生以下1200円)、夜の部は一律に3500円。いずれも未就学児は入場不可。チケットに関する問い合わせは(電)03・5216・9235(平日午前10時~午後5時)サンケイリビング新聞社まで。

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