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凍るナイアガラ 造形美は日々変化 冬のカナダ・オンタリオ州
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雪で覆われた地面と大瀑布とのコントラストは冬ならではの眺め=2015年2月1日、ナイアガラの滝(カナダ・オンタリオ州、佐藤良一さん撮影) カナダと米国との境に位置するナイアガラの滝は人の英知など及ばない自然の「力」そのものだ。そんな世界三大瀑布(ばくふ)の1つも、零下20度を下回る日が続くと凍結する。
辺り一面は雪と氷に覆われた白銀の世界。水しぶきによって岸壁には白鬚(しろひげ)のような氷柱が連なり、周りの木々や街灯さえ樹氷の花を咲かせる。
凍結の度合いは気象で左右されるが、「アイスブリッジ」と呼ばれる自然現象が起きた今年は例年より厳しいようだ。滝の上から下までが柱のように凍結してつながった荘厳な姿を、世界中から訪れる観光客に見せている。
1月にはカナダ人男性が初めてアイスブリッジを利用して、凍結したナイアガラの滝を登り切ったことが伝えられた。彼の身体を支えたのは2本のアイスバイル(アイスクライミング用のピッケル)と、靴の先端に2本の爪が付いたアイゼンだけだったという。
毎分1億5500万リットルもの大量の水が50メートル下の滝壺へと流れ落ち、爆風のごとく水しぶきを舞い上げる。ナイアガラの滝の観光は、春から秋にかけてのシーズンが定番だ。
一方、凍りついた滝はこの時期にしか見ることができない自然の営み。観光客が少ないことから日々変化する造形美を思う存分堪能することができる。防寒対策は必須だが。
≪甘みと芳香凝縮 誇りのアイスワイン≫
ナイアガラの滝が凍る頃、近郊のワイナリーではアイスワイン用のブドウの収穫期を迎える。アイスワインは冬到来まで収穫を遅らせたブドウで作られるワインのことである。名前の通りに自然凍結したブドウで作るのだ。
零下8度以下となる夜間と早朝に、凍った状態のブドウを一つ一つ手作業で摘み取りそのまま圧搾(あっさく)。半年ほど発酵させて瓶詰めした後、さらに数カ月の保管期間を経てアイスワインが出来上がる。凍結して水分が少ないため、通常の8倍以上のブドウを使用するという。
極寒の中での手作業、大量生産も望めず高価になるが、凝縮された果実の甘みと芳香が楽しめる逸品だ。
ブドウの品種は皮が厚く耐寒性があるヴィダルが主だが、近年はリースリング種で造る白の他、カベルネフランで造られる赤のアイスワイン、スパークリング・アイスワインも一般に出回るようになった。
品質の高いアイスワインで知られる「ペラー・エステート」ワイナリーを訪れた。ナイアガラ近郊の多くのワイナリーは、通年を通して観光客を受け入れている。テイスティングはもちろんのこと、レストランを併設しており、自慢のワインと料理のマリアージュも楽しむこともできる。
気象条件に左右されやすいアイスワインを造る意味は? 「毎年造り続けられる自然環境が整っているのは、世界的に見てもこの一帯だけ。だからこそ誇りがある。それにおいしいですし」とソムリエのエリッサ・ヒブスさんは笑みを浮かべる。
昨年は夏から秋にかけて暑い日が続いたので、しっかり完熟した果実味の強いブドウに育ち、アイスワインの出来も良いという。今冬のアイスワインは秋頃から店頭に並ぶだろう。(文:旅ライター 鈴木博美/撮影:カメラマン 佐藤良一(りょういち)/SANKEI EXPRESS)
ナイアガラの滝とワイナリーに関する情報はオンタリオ州観光局公式サイト「オンタリオスタイル」で検索。