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中国 きょう全人代開幕、国防費10%増見通し 軍拡堅持 米とのバランス逆転狙う
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全人代の開幕を控え、北京の人民大会堂周辺を警備する武装警察隊員=2015年3月4日、中国・首都北京市西城区(共同) 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は5日に開幕する。傅瑩報道官は4日、北京の人民大会堂で記者会見し、2015年度の国防費が前年度実績比約10%増になる見通しだと明らかにした。2桁増となれば5年連続となる。
習近平指導部は12年11月の発足以来「戦って勝てる軍隊」の建設をスローガンに掲げている。国防費の増勢を維持することにより、軍拡路線を一層鮮明にした。
全人代では国防費の具体的数字を公表するほか、今年の国内総生産(GDP)成長率の政府目標を打ち出す。習指導部は急成長から安定成長への移行を目指すとしており、成長率を14年の7.5%から7.0%に引き下げるかが焦点。李克強首相が行う政府活動報告で、対日政策に言及するかも注目される。
傅氏は「(ほかの)大国と比べて中国の軍備は劣っている」と述べ、国防費拡大の理由として軍事技術の研究開発や兵士らの待遇改善を挙げた。
傅氏は「中国の国防は防御的なものであり、今後も平和的発展の道を歩む」と強調し、国際社会で拡大する中国脅威論の払拭に努めた。傅氏はまた、この2年で全人代の代表39人が規律違反や違法行為により罷免されたことを明らかにし、反腐敗運動を一層推進すると表明。「全国各地の代表の資質を高めなければいけない」と述べ、順法意識向上が必要とした。
深刻化する公害問題については「大気、水質、土壌の汚染に関する防止法の整備を進める」と述べ、環境対策を強化する方針を強調。また、国家安全法や反テロ法の制定に向けた審議を重ねているほか、家庭内暴力(DV)に対応する法の制定も進めているとした。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪軍拡堅持 米とのバランス逆転狙う≫
中国政府は4日、2015年度の国防費が前年度実績比約10%増になると表明した。8900億元(約17兆円)程度となる見通し。米国に次ぐ世界第2の経済大国の中国は経済が減速しているが、軍拡路線は堅持する姿勢を鮮明にした。国防費抑制を迫られる米オバマ政権を尻目に、習近平指導部は東・南シナ海で「野心的で挑発的」(軍事専門家)な活動を推進。将来的にはアジア太平洋地域での米中軍事バランスの逆転を狙う思惑だ。
「南シナ海に根を下ろし、南シナ海を防衛し、南シナ海で貢献する」
2月、中国南部の海南島の軍事管理区域内にある山の中腹には海軍のスローガンが大きく掲げられていた。海南島は南シナ海を管轄する南海艦隊の海軍基地がある軍の要衝。多くの観光客でにぎわう海水浴場のすぐ近くには、威容を誇るように軍艦が停泊していた。
習指導部は12年11月の発足後、ベトナムやフィリピンなどと中国が領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で岩礁の埋め立て作業を加速している。
国際軍事専門誌IHSジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーによると、中国が南沙など3諸島に設置した海南省三沙市の管轄下にあるガベン礁(中国名・南薫礁)では、14年3月から10カ月間で道路を備えた人工島がつくられた。他の複数の岩礁でも人工島がつくられているといい、近隣国の反発や国際社会の懸念を顧みず、中国は「海洋強国」へと突き進む。
「米国率いる西側国家が海上で中国を包囲する鎖を築こうとしている」。中国の国防大学の李大光助教授は昨年12月、海軍発行の専門誌でこう危機感を示し、アジア太平洋地域で米国の優位性を突き崩すことを軍の「使命」と位置付けた。
使命の照準は日本にも向けられている。東シナ海空域での防空識別圏設定、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での中国公船による日本領海侵入…。習国家主席は昨年「アジアの安全はアジア人民が守らなければならない」と強調した。米国を排除した新たなアジアの安全保障秩序構築へ意欲を隠さない。
膨張を続ける野心を支える中国の国防費は、日米関係にも変化を迫る。
米国は、厳しい財政事情から国防費の削減圧力がかかるが、反発の声も相次ぎ、せめぎ合いが続く。カーター国防長官は2月の議会証言で、領有権などを「国際基準に反する方法」で主張し地域の緊張を高めているとして、中国の軍事力増強の動きを注視し続けなければならないと強調した。
米軍高官らは議会の公聴会で、財政再建を目的とした国防費の強制削減への反対姿勢を次々に表明。ウェルシュ空軍参謀総長は2月下旬に「南シナ海などでの空・海域への勢力拡大、宇宙分野や衛星攻撃能力強化への軍事費投入は懸念材料だ」と指摘した。
米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長も3月3日「中国は驚くべき速度で新たな軍事システムを配備している」と述べ、米中関係への影響を検討しなければならないと強調した。
米政府高官らは、日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定などを見据えた「同盟の近代化」の必要性にも言及。日本が軍事面で役割を拡大させることに期待をかけている。(共同/SANKEI EXPRESS)