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イスラエル総選挙 ネタニヤフ政権継続へ 「脅威」で巻き返し 中東和平困難に
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3月18日、イスラエル・テルアビブのリクード本部で支持者に手を振るベンヤミン・ネタニヤフ首相=2015年(ロイター) イスラエル国会(定数120)の前倒し選挙は18日、開票がほぼ終了し、通算4期目を目指すベンヤミン・ネタニヤフ首相(65)の右派政党リクードが第1党となった。首相指名に向け連立交渉が本格化するが、極右や宗教政党と関係が近いネタニヤフ氏が政権を維持する公算が大きい。
ハーレツ紙(電子版)によると、開票率99%でリクードは30議席を獲得した。政権交代を目指した労働党などの中道左派連合は24議席にとどまった。今後、ルーベン・リブリン大統領(75)が連立政権を発足させる可能性が最も高いと判断した首相候補に組閣を指示する。
ネタニヤフ氏は18日未明、支持者集会で「リクードにとって偉大な勝利だ。強力で安定した政府を作る」と宣言。労働党のイツハク・ヘルツォグ党首(54)は敗北を認め、ネタニヤフ氏を祝福した。
アラブ系の統一会派は14議席で第3勢力に台頭。中道のイェシュアティドは11議席を、中道新党クラヌは10議席をそれぞれ獲得した。「ユダヤの家」などの極右や宗教政党は8~6議席を分け合った。投票率は約72%だった。
リクードの報道官は18日、ネタニヤフ氏は2~3週間での組閣を目指すと発表。ネタニヤフ氏は中道左派連合との大連立は否定しており、連立交渉は右派が中心となる見通しだ。(テルアビブ 大内清/SANKEI EXPRESS)
≪「脅威」で巻き返し 中東和平困難に≫
イスラエル総選挙で一時、劣勢が伝えられたネタニヤフ首相は、パレスチナ問題やイラン核問題など安全保障面の「脅威」に争点を絞り、国民の恐怖心を最大限にかき立てる戦術を取った。投票直前には事実上、パレスチナとの「2国家共存」を目指す枠組みを否定。和平協議再開はいっそう困難となった。
「ビビ(ネタニヤフ氏の愛称)のような強い指導者が必要だ」。投票日の17日、最大都市テルアビブでネタニヤフ氏の右派リクードに投票したエイタンさん(34)は、こう強調した。
国会任期を2年以上残して行われた今回選挙は、ネタニヤフ氏の信任を問う意味合いが強く、当初はリクード勝利が有力視された。しかし、労働党とハトヌアで作る中道左派連合が、物価や家賃高騰への国民の不満を背景に支持を拡大。リクードは投票数日前に支持率でリードを許した。
そんな中で飛び出したのが、地元メディアとの会見で、在任中はパレスチナ国家の樹立を認めないというネタニヤフ氏の発言だ。ネタニヤフ氏は「パレスチナ国家を認めれば、イスラム過激派に攻撃拠点を与えることになる」とも主張。イスラエルと、パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスとの間では昨年夏、大規模な軍事衝突が発生しているだけに、一連の発言は有権者に一定の恐怖感と説得力を与えた可能性がある。
一方、パレスチナ側はネタニヤフ氏の強硬路線継続は織り込み済みだ。自治政府高官は17日、イスラエル訴追を目的とした国際刑事裁判所(ICC)加盟をめぐる外交努力を加速させる考えを示した。
これに対してもイスラエルが反発を強めるのは必至で、和平問題は出口のない状況に陥っている。(テルアビブ 大内清/SANKEI EXPRESS)
≪イラン核協議でオバマ氏の障害≫
米欧など6カ国とイランによる核協議の合意を目指すバラク・オバマ米大統領(53)にとり、イスラエルのネタニヤフ首相が続投することになれば、残り2年を切った任期でレガシー(政治的遺産)を作る上で大きな障害となる。核協議に反対するネタニヤフ氏が頼みとする米国の野党・共和党が勢いづき、制裁圧力を強めるのは確実だからだ。
ネタニヤフ氏の右派リクードが第1党の座を確実にするのに先立ち、ジョシュ・アーネスト米大統領報道官(38)は17日の記者会見で「イスラエル国民が誰を選ぼうとも、大統領は緊密に連携できると確信している」と述べた。
ただ、イラン核協議や、米国がイスラエルとパレスチナの和平協議の仲介で目指す「2国家共存」に異を唱えるネタニヤフ氏は、オバマ氏を阻む存在だ。
ネタニヤフ氏は3日、オバマ氏の頭越しに訪米し、米議会の上下両院合同会議でイランとの核協議の危険性を訴えた。対立は極限に達しており、オバマ政権はネタニヤフ氏の退陣を望んだとされる。
米国にネタニヤフ氏を招いた共和党は上下両院で多数を握っており、核協議が合意した場合に実施される予定の対イラン制裁解除で強い権限を持つ。オバマ政権にとっては、仮に合意に至ったとしてもイランが求める原油輸出制限を解除する法案を成立させるのは困難とみられている。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)