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世界の家庭料理巡り 中東&アフリカ編(下) 食文化と宗教の深い関係を実感
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ワディラム砂漠ツアーのディアーで出てきた、肉や野菜を砂の中で蒸す料理。素材のうま味が最大限に引き出されている=2014年10月28日、ヨルダン(獨協大学_有志学生記者、斎藤悠輔撮影)
エジプトの次に向かったのはヨルダン。入国してまず感じたことは、親日家が多いということだ。帰国後に起きた「イスラム国」による日本人殺害事件でも、ヨルダン国民の親日ぶりが報道されていたが、現地で実際に、日本人への優しさに触れることができた。
日本人であるというだけで現地の人から優しくされるのは、これまでに日本人が中東で築き上げてきた信頼の証しであり、しっかり受け継いでいかなければならないと感じた。
ヨルダンでは、砂漠で一晩を過ごすツアーを体験した。向かったのは、中部に広がる「ワディラム砂漠」。砂漠の入り口までバスで行き、4WD車に乗り換えて荒野を進む。見渡す限り、砂の世界が広がる。
砂漠に住むベドウィンのもてなしが、このツアーの醍醐味(だいごみ)だ。ツアーの途中に設けられたテントでは、ベドウィンティーが振る舞われた。ポットに茶葉を入れて火にかけて煮出すので、濃くて苦い。これに砂糖をたっぷり入れて、ティータイムを楽しむ。
宿泊するキャンプ場には電気が通っており、シャワーからお湯も出る。とても砂漠のど真ん中とは思えない環境だ。いよいよディナーだ。何が出されるのかと待っていると、砂の中から釜が取り出された。これがベドウィンの伝統的な調理方法で、砂漠の砂に野菜や肉を入れた釜を埋めて蒸し焼きにする。野菜や肉はとても甘く、素材のうま味が最大限に引き出されていた。
おいしい食事を終えると、外はもう暗くなっていた。砂漠のど真ん中で横になって満天の星空を見上げながら眠りにつく。一生忘れることのできない、かけがえのない思い出となった。
ワディラム砂漠ですてきなひと時を過ごして、次に向かったのはイスラエルだ。まず入国が大変だった。出国する際の航空機のチケットを入国審査で見せなければならないのだが、間違えて別のチケットを見せてしまい、その誤解を解くのに3時間もかかった。
それでも、そんな大変な入国審査をくぐり抜けるだけの価値がある体験ができた。現地の学生の家庭にホームステイをすることができたのだ。ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の3つの宗教にとって重要な場所であるエルサレムを案内してもらい、かつてキリストが十字架を背負って歩いたという道を歩き、悠久の歴史を肌で感じた。
イスラエルのユダヤ人のおふくろの味は、その家の家系がどこの国からやって来たかによって決まるのだという。世界各地から持ち寄られたハイレベルな料理を味わい、世界中の食文化に触れることができるのだ。
ホームステイ先の家庭で食べた料理で最も印象に残ったのは、ユダヤ人が安息日や祝日に家族で食べる「ハッラー」というパンだ。練った生地をひも状に伸ばし、三つ編みにして焼くのだが、家族全員でやっと食べられるくらいの大きさだ。イスラエルでも、食文化が宗教と深く関係していることを実感できた。
■確かにあった「豊かで平和な生活」
「イスラム国」による日本人人質事件を受け、中東・アフリカ地域を旅行することの危険性がメディアなどで指摘されている。人質事件の以前にも、訪問したカイロ大学の前では爆撃テロが起きるなど、危険性が小さいとはいえない。
それでも、中東・アフリカ地域の豊かな食文化や歴史遺産は魅力的で、実際に行ってみないと分からないことが多いと改めて感じた。これまでの旅の中でも、この地域は特に印象深い。これまでの自分の価値観が大きく変わるような場面に何度も直面した。危険性ばかりが注目されるが、そこには「豊かで平和な生活」が確かにあった。(獨協大学 有志学生記者、斎藤悠輔)