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ヨルダン標的 有志連合切り崩し狙う 「イスラム国」死刑囚釈放ギリギリの交渉
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首都アンマンの王宮前では、イスラム国に拘束されているヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉の妻(右)ら家族が涙を流し、救出を訴えた=2015年1月28日、ヨルダン(ロイター) イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に拘束されているフリージャーナリスト、後藤健二さん(47)のものとみられる音声のメッセージが29日午前、インターネット上で公開され、ヨルダンに収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚をトルコ国境に連れてくるよう要求した。イラク北部モスル時間で29日の日没(日本時間午後11時半すぎ)を期限に設定。応じなければ、拘束しているヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉(26)を殺害すると予告した。イスラム国側は、ヨルダンを標的に絞って揺さぶりをかけ、米国が主導し、ヨルダンなど中東諸国が参加するイスラム国空爆の有志連合の切り崩しを狙っているもようだ。
後藤さんとみられる音声は、英語で「トルコ国境でサジダ・リシャウィを私の命と引き換えに交換する準備ができないならば、ヨルダン人パイロットのモアズ・カサスベは直ちに殺されることになるだろう」などと述べた。具体的な交換場所は示さず、後藤さんをいつどこで解放するかにも言及していない。
ヨルダン政府は28日に、イスラム国空爆作戦中に搭乗機が墜落し拘束されたカサスベ中尉を解放すれば、女死刑囚を釈放する用意があると表明しており、ギリギリの交渉を続けた。ヨルダンのジュデ外相は米CNNテレビに、後藤さんの解放についてもイスラム国と交渉しているとする一方で、中尉の解放を優先していると強調した。ただ、犯行グループはあくまで後藤さんと女死刑囚の1対1の交換を要求しており、女死刑囚を引き渡しても中尉の解放は保証されていない。ヨルダン国内では、中尉の解放を優先すべきだとの声が一段と高まっている。
中尉の父親のサフィさんは28日、首都アンマンの王宮前で息子の解放を求める集会に参加した後、アブドラ国王に会い、一層の解放努力を求めた。サフィさんがAP通信に語ったところによると、国王は「すべては大丈夫だろう」と述べたという。
国内世論をにらみながら厳しい判断を迫られているヨルダンは、イスラム国が日本政府への身代金要求を取り下げ、女死刑囚の釈放を要求したことで、“当事国”として引きずり出された。イスラム国は多くの国の出身者を人質にしているとされるが、あえてヨルダンを標的とした。日本が親交の深いヨルダンのアンマンに現地対策本部を置いたこともあるが、有志連合切り崩しの格好の突破口と位置づけているようだ。
イスラム国への空爆にはヨルダンのほか、サウジアラビアやバーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)が参加。イスラム国は当初、中尉解放の条件として有志連合からの脱退を要求していたとされ、その狙いは変わっていないとみられる。
ヨルダンは近隣諸国への「全方位外交」と、米欧協調路線をとってきた。ただ、国民の7割がパレスチナ難民とその子孫とされ、潜在的にイスラエルへの憎悪と、その後ろ盾となっている米国への懐疑心が強い。昨年9月に公表された世論調査では、イスラム国を「テロ組織」と回答した人が62%にとどまった。イスラム国がこうした微妙な世論を見透かし、中尉を人質に揺さぶりをかけ、有志連合参加に反対する声を高めようとしている可能性もある。(SANKEI EXPRESS)