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ノスタルジックなピアノの響き チリー・ゴンザレス、レネ・パウロ

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ノスタルジックなピアノの響き チリー・ゴンザレス、レネ・パウロ

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シンガー・ソングライター、チリー・ゴンザレス(提供写真)。(C)2015_Alexandre_Isard  ピアノは不思議な楽器だ。他のあらゆる楽器のなかでもっとも音域が広く、一人でオーケストラ並みの音階を生み出せる。ダイナミックに弾けば迫力ある演奏になるし、静けさを追求することもできる。だからさまざまなスタイルのピアニストがいるのもうなずける。そんな多様な世界で、今回はどこかノスタルジックなプレーをする2人のピアニストを紹介しよう。

 弦楽四重奏取り入れ

 まずは、カナダ出身で現在はフランスを拠点に活動するチリー・ゴンザレス。もしかしたらファイストのプロデューサーとして認識している人も多いかもしれない。とにかく才能あふれるマルチな人物で、シンガー・ソングライターとしてポップな曲を歌ったかと思えば、ヒップホップのビートに乗せてラップを披露し、テクノのサウンドに挑戦したりもする。しかし、彼の評価を一段と高めたのは、2004年に発表したピアノだけのアルバム「ソロ・ピアノ」ではないだろうか。親しみやすい練習曲のようなメロディーでありながら、ジャズやクラブミュージックの要素がさりげなく取り入れられた作品集は、12年に続編も作られた。最新作「チェンバーズ」はその延長線に位置する意欲作。ピアノに弦楽四重奏を取り入れた室内楽的サウンドはどこか懐かしく、クラシックともジャズともいえない魅力的な音空間を演出してくれる。

 ハワイの風も感じる

 一方、ハワイのレネ・パウロは、まさにノスタルジーをそのまま音にしたようなスタイルだ。景気の良かった1960年代に数え切れないくらいのレコードを出していた彼は、ワイキキのナイトクラブの顔とでもいうべき存在だったピアニストである。しばらくブランクもあったが、21世紀に入ってから復活し、85歳となる現在も精力的に活動している。今年発表されたばかりの新作「スターダスト~スウィート・メロディー・フォー・ハワイ~」は、いわゆるスタンダード集。「ムーン・リバー」、「星に願いを」、「虹の彼方に」といったどこかで聴いたことのあるメロディーが優しいタッチで奏でられていく。ジャズやミュージカルの名曲ばかりなのに、なぜかハワイの風が感じられるのも面白い。少しせつない気分になるためのBGMとしても申し分のない作品だ。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS

 ■Chilly Gonzales 1972年、カナダ生まれのシンガー、ピアニスト、プロデューサー。ジェーン・バーキンやファイストの作品に関わったことで知られ、さまざまなスタイルで自身のアルバムも発表。ピアノ・ソロからラップまで披露する才人ぶりは唯一無二の個性である。

 ■Rene Paulo 1930年、ハワイ生まれのピアニスト。ジュリアード音楽院でクラシックの基礎を学んだ後、60年代にはジャズやラウンジ・テイストの奏法で多数のレコードを発表。2002年に三十数年ぶりのアルバム「ワイキキ」をリリースして復活し、大きな話題を呼んだ。

 ■くりもと・ひとし 音楽&旅ライター、選曲家、ビルボードライブ企画プランナー。2年間の中南米放浪の経験を生かし、多彩なジャンルで活動中。情報サイト、All Aboutでアルゼンチンのガイドを担当。最新著書は「アルゼンチン音楽手帖」。

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