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イラン核開発、10~15年制限 枠組み合意 中東情勢混沌 外交解決に賭ける米
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スイス・ローザンヌで、イラン核問題の包括的解決に向けた枠組みで大筋合意したイランと欧米など6カ国のメンバー=2015年4月2日(ロイター) 欧米など6カ国とイランは2日、スイス西部ローザンヌでイラン核問題の包括解決に向けた枠組みに合意、共同声明を発表した。ウラン濃縮に使う遠心分離機を3分の1に減らすなど核開発を10~15年にわたり制限、国際原子力機関(IAEA)の徹底した監視下に置くことが柱。最終合意の履行確認に合わせて、核兵器開発疑惑に関する欧米や国連の対イラン制裁を解除する。
枠組み合意を基に詳細を詰め、6月末までの最終合意を目指す。オバマ米大統領は記者会見で、イランの核兵器保有を阻止する「歴史的な合意だ」と強調した。ただ、制裁解除の具体的な条件やペースに加え、IAEAの査察権限がどこまで及ぶかは明確にされていない。枠組み合意に関して米国務省とイラン側がそれぞれ異なる文書を発表しており、今後、欧米側とイラン双方の解釈の違いが表面化する可能性が高い。
共同声明や米国務省の発表によると、遠心分離機の設置数を現在の1万9000基から約6000基に減らし、ウラン濃縮活動を中部ナタンズの施設に限定。地下深くに造られた中部フォルドゥでの濃縮活動は認めず、研究施設に転換する。西部アラクの実験用重水炉は兵器級プルトニウムが製造できないように再設計する。
IAEAはすべての核関連施設に立ち入るとし、イランによる最終合意の履行を確認した時点で、米国や欧州連合(EU)が核兵器開発疑惑を理由にした金融制裁などを停止。国連安全保障理事会決議による制裁も解除するとしている。
5常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランは3月末だった枠組み合意の期限を延長し、8日間にわたり外相級で協議を続けていた。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪中東情勢混沌 外交解決に賭ける米≫
欧米など6カ国とイランが核問題の包括解決に向けた枠組みで合意した。混乱の一途をたどる中東情勢を前に、イランの核武装というさらなる危機回避のため退路を断って外交解決に賭けるオバマ米政権。イランと敵対するイスラエルが危機感を示し、アラブ諸国も懸念を抱く交渉の行方は中東の命運を握る。
外交解決、制裁強化、空爆。オバマ大統領は2日、ホワイトハウスで声明を読み上げ、イラン核問題への対処は3つの選択肢しかないと指摘し、「中東でもう一つの戦争を始めるのか」と世界に問い掛けた。
これまで経済制裁だけでは、イランの核開発の進展は阻止できなかった。空爆しても核開発を数年程度、後退させることしかできず、結果的にはイランを核武装に駆り立てるだけ。
オバマ氏はこう一つ一つ説明し、イランの核開発を国際社会の徹底的な監視下に置いて制限するのが最も現実的な選択肢だと力説した。
しかし、イスラエルや、イスラム教シーア派の大国イランの影響力拡大を恐れるスンニ派のアラブ諸国の認識は違う。
限定的とはいえ、イランにウラン濃縮の継続を容認することは、イランが潜在的な核兵器開発能力を維持することになるからだ。経済制裁の解除によりイランが資金力を回復すれば中東地域でのテロ組織支援や他国への干渉を助長しかねないとの懸念も強い。
「歴史的な合意だ」と称賛したオバマ氏に対し、イスラエル政府高官は「歴史的な誤りだ」と切り捨てた。
イランで欧米との対話路線を掲げた保守穏健派のロウハニ政権が2013年8月に発足したのを機に始まった交渉を取り巻く環境は、この間に一変した。
イラク、シリアではイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が台頭。今回の協議直前には、スンニ派の盟主サウジアラビアが、隣国イエメンのシーア派系武装組織「フーシ派」に対する空爆を開始。フーシ派を軍事支援しているとされるイランと「代理戦争」の様相だ。
「中東を不安定化させるイランの動きを深く懸念している」。イランのザリフ外相との8日間に及ぶマラソン協議の末、枠組み合意にこぎつけたケリー米国務長官は、スイス・ローザンヌでの記者会見でこうイランを批判せざるを得なかった。
米政府は枠組み合意について、イランが核爆弾1個分の高濃縮ウランをつくるのに要する時間を現在の2~3カ月から1年に引き延ばすことができるとしている。今年2月からはモニズ米エネルギー長官自らが米代表団に参加。遠心分離機の数や性能、濃縮ウランの備蓄量などが相互に絡み合う「複雑な方程式」(米政府当局者)に取り組んだ結果、「驚くほど具体的で包括的」(米紙ニューヨーク・タイムズ)な内容となった。
外交関係が断絶した中で対話を重ね、一定の外交成果にこぎ着けた米国とイラン。核問題を通じて両国の関係改善が進めば、中東の安定化に大きく貢献するとの期待も大きいが、「核兵器に通じる道をすべてふさぐ」(オバマ氏)ために残された交渉期間は3カ月と短い。(共同/SANKEI EXPRESS)