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政治
原発・石炭火力…ベース電源6割に 自民調査会、引き上げ提言
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自民党の「原子力政策・需給問題等調査会」の額賀福志郎(ぬかが・ふくしろう)会長(右)からエネルギーミックス提言を受ける安倍晋三(しんぞう)首相。左端は船田元(ふなだ・はじめ)会長代理=2015年4月7日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影) 自民党の原子力政策・需給問題等調査会は7日、2030(平成42)年の電源構成比率(エネルギーミックス)について、原子力や石炭火力などの「ベースロード電源」の割合を現在の約4割から6割程度にするよう求める提言をまとめ、額賀福志郎会長(71)が官邸で安倍晋三首相(61)に手渡した。
額賀氏は「徹底した省エネをやる、原子力は縮小していく、再生エネルギーは最大限活用していくという基本的な考えの下に提言をまとめた」と指摘。首相は「安全性や安定供給、電力料金の抑制などを考えながらしっかり議論したい」と応じた。
政府は今後、経済産業省の有識者会議での議論を加速させ、6月までに電源構成比率を正式に決定する方針。ただ、安価で昼夜を問わず一定の発電ができる原発、石炭火力、水力・地熱のベースロード電源をめぐっては、温室効果ガス排出削減目標や原発再稼働と絡んで、自民党内に意見の対立が顕在化。省庁間の綱引きも激しくなっている。
≪「政高党低」 承認手続き中止で自民混乱≫
自民党が電源構成比率をめぐり混乱している。党原子力政策・需給問題等調査会の提言は党政調審議会の承認手続きを経ないまま安倍晋三首相に提出された。温室効果ガス排出量の削減目標をめぐる党内議論との整合性を問う声が噴出したためだ。再稼働する原子力発電の割合も政府方針に沿っており、「党の意見が尊重されない『政高党低』の端的な例」(党中堅)との批判も渦巻いている。
「政府の動きを見ながら、われわれも責任をもって対応する」
調査会の額賀福志郎会長は7日、首相に提言を手渡した後、政府の電源構成比率の策定作業に、党として積極的に関与していく考えを強調した。
ただ、政府はすでに2030年の電源構成比率について、原子力を20%程度に回復させることなど、具体案づくりが進んでいる。調査会が提言した「ベースロード電源6割」という大枠は、その政府案をもとにした数字だった。
提言内容を調整した2日の調査会会合では、参加議員から「原発の比率を東日本大震災前の水準に戻すことありきの議論だ」などの批判が噴出。さらに、6日の党環境・温暖化対策調査会の会合では、30年までに温室効果ガス排出量を05年比で30%以上削減することを明記した緊急提言案が示されたが、額賀氏の調査会の提言と齟齬が出かねない内容に議論は紛糾した。
稲田朋美政調会長は提言をめぐる党内の混乱が拡大することを懸念し、7日に予定した党政調審議会での承認手続きを中止した。ただ、政府は具体案づくりを急ぎたい官邸の意向で、首相に提出することだけは実現した。党内からは「官邸に利用されている」(閣僚経験者)とやっかむ声も漏れている。(力武崇樹/SANKEI EXPRESS)
≪「再生エネ35%」環境省試算で波紋≫
2030年の電源構成比率をめぐっては、政府内でも綱引きが続いている。政府見解の取りまとめに当たっている経産省は、再生エネルギーの発電割合を20%台半ばとする大枠を固めているが、環境省は最大35%とする試算を発表しているためだ。
「技術的な制約やコストの課題など、実現可能性が十分に考慮されていない」
宮沢洋一経産相(64)は7日の、環境省の試算に強い不快感を示した。
環境省が3日公表した試算では、送電網を整備して電力会社間で電力を融通するなどした場合、30年時点で全発電電力量の最大約35%を再生エネで供給できるとした。
ただ、「大胆な仮定で可能性を示した試算」(環境省担当者)のため実現に向けた道筋は十分に描けておらず、経産省は電源構成の議論に反映することに難色を示している。(SANKEI EXPRESS)