SankeiBiz for mobile

【安倍政権考】左派勢力 メルケル氏利用し主張

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

【安倍政権考】左派勢力 メルケル氏利用し主張

更新

根津美術館で展示品を鑑賞する安倍晋三(しんぞう)首相(左)とドイツのアンゲラ・メルケル首相=2015年3月9日、東京都港区(代表撮影)  「メルケル首相を8年ぶりに再び総理大臣として日本にお迎えできました。『アンゲラ』の来日を契機として、世界の平和と繁栄に貢献する2国間関係がさらに発展していくことを期待します」

 安倍晋三首相は9日、官邸にドイツのメルケル首相を迎え、首脳会談の冒頭にこう語った。メルケル氏が官邸を訪れるのは8年前の第1次安倍政権以来。とかく日本とは疎遠といわれてきたメルケル氏だが、安倍首相は第2次政権発足以降、国際会議などでメルケル氏と頻繁に会談を重ね、「アンゲラ」とファーストネームで呼びかけるほどまで関係を深めた。

 実際は和やかムード

 政府筋によると、9日夜に公邸の和室で開かれた夕食会も和やかなムードだった。

 会食の終了時、安倍首相は室内に飾られていた伊藤博文の書を紹介、伊藤が大日本帝国憲法を作る際にドイツの前身であるプロイセンの憲法を参考にしたことに触れると、メルケル氏も興味深そうに話を聞いていたという。

 メルケル氏の来日は、日独首脳の親交がさらに深まったことを印象づけた。一方で、一部メディアの報道ぶりをみると、メルケル氏が歴史認識問題や日中・日韓関係、原発問題について安倍首相に苦言を呈することを期待したかのようだった。

 首脳会談後の共同記者会見で、メルケル氏は戦後のドイツと近隣諸国との関係について「過去の総括というのは和解のための前提の一部分だった」と言及したと、10日の朝日新聞朝刊は1面トップの大見出しで取り上げ、メルケル氏が歴史認識問題に「踏み込んだ」と解説した。同日の日本経済新聞朝刊は、同じメルケル氏の発言を「近隣国への対応で日本に不満をにじませた」と報道した。

 11日の東京新聞朝刊は、9日に朝日新聞などが主催したメルケル氏の講演会での歴史認識や日中・日韓関係に関する発言を取り上げ、戦後70年の首相談話に絡め「安倍首相にくぎをさす狙いがあると受け止められた」と強調した。

 ただ、これらのメルケル氏の発言は、いずれも自分から発言したものではなく、記者や講演会の聴衆からの質問に答えたものだった。メルケル氏は「私はアジア地域にアドバイスする立場にはない」と断りも入れていた。講演会で、近隣諸国に関する質問をしたのは、司会で主催者側である朝日新聞の西村陽一取締役編集担当や、その西村氏から指名を受けた姜尚中・聖学院大学長だった。

 ドイツにも歴史認識で事情

 民主党の岡田克也代表は、10日にメルケル氏と会談し、同氏が慰安婦問題に関し「きちんと解決した方がいい」と発言したことを紹介した。ところが、後日ドイツ政府から「日本政府がどうすべきだという発言を行った事実はない」と指摘され、民主党は「明示的に日本政府に解決を呼びかけたものではなかった」と釈明に追われた。

 政府高官は「左派勢力の人たちは、メルケル氏を使って、自分たちの主張を通そうとするのはやめるべきだ」と苦言を呈した。歴史認識などに関する自分たちの考えをストレートに掲げると受け入れられづらいので、メルケル氏に代弁してもらおうとした。つまり、“外圧”を利用しているというのだ。

 「ナチスのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)について、ドイツが欧州の人々の心の奥底では決して許されたわけでない。日本よりよっぽどひどいことをしており、ドイツとしてはあまり蒸し返してほしくない話だ」と解説するのは外務省幹部。近隣国との関係についてドイツと日本ではそもそも事情が異なり、単純に比較することに意味はないという。

 今回のメルケル氏の来日が日独関係のさらなる発展につながるのか、メディアの在り方も問われた日独首脳会談だった。(政治部 桑原雄尚/SANKEI EXPRESS

ランキング