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京博「桃山時代の狩野派」座談会 ピンチの慶長年間 勝手に応援

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京博「桃山時代の狩野派」座談会 ピンチの慶長年間 勝手に応援

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桃山時代の狩野派(かのうは)について熱く語る井浦新(いうら・あらた)さん(中央)と山下裕二・明治学院大教授(左)、山本英男・京都国立博物館上席研究員。映し出されているのは狩野山楽筆の「唐獅子図屏風(京都・本法寺)」を部分拡大したもの=2015年4月11日、京都市東山区の京都国立博物館(田中幸美撮影)  京都国立博物館(京博、京都市東山区)で開催中の特別展「桃山時代の狩野派-永徳の後継者たち-」を記念した座談会が11日、京博で行われ、SANKEI EXPRESSの連載「日本遊行 美の逍遥」でおなじみの俳優でクリエイターの井浦新(いうら・あらた)さん(40)が登場した。京博の文化大使も務める井浦さんは、山下裕二・明治学院大教授、京博の山本英男学芸部上席研究員とともに、室町時代から江戸時代末期まで400年にわたって画壇の中心であり続けた最強の絵師集団「狩野派」の桃山時代の作品の見どころや解釈、時代背景などについて熱く語った。

 座談会は、「日本美術応援団、桃山時代の狩野派を応援する!!」と銘打って開催。「日本美術応援団」は、山下教授が団長となり、団員第一号の画家、赤瀬川原平さん(1937~2014年)とともに立ち上げ、さまざな絵師や画家、作品を勝手に応援する活動をしている。井浦さんは昨年、団員第3号に就任した。ちなみに団員第2号は南伸坊さん(67)。

 今年は「琳派400年記念」であることを意識して風神(緑)・雷神(白)をイメージした左右色違いのトレッキングシューズで登場し、ファッションにも美術的要素を取り入れるなどこだわりを見せた。

 座談会では、狩野派史上最大のピンチとなった慶長年間前後に着目。大画(たいが)様式を確立し、狩野派の地位を不動のものとした偉大なカリスマ、永徳の没後、それまでの「豪壮」から「華麗」へ、さらに新たな為政者・徳川家に対応すべく、「瀟洒(しょうしゃ)淡麗」へと画風を変えていく一大転換の過程を、永徳の後継者たちの作品を実際に見ながら解説した。

 ≪優しいまなざし 魅力あふれる絵師≫

 今回の特別展は永徳と探幽という二大巨頭にはさまれた世代のあまりなじみのない光信、孝信、内膳らを取り上げている。展示の全体の印象について井浦さんは「絶大な権力を持った絵師集団、狩野派には昔、一種の抵抗感があった。(長谷川等伯など)抵抗勢力の方にシンパシーを感じていた」と切り出した。「今回見て、2人以外の狩野派の流れがよく見えてきた。こんな絵を描いた本人たちはどんな人物だったのかと思わせる作品ばかり。孝信と内膳が強烈に印象に残った」と述べた。

 まず、山下さんが永徳の絶筆的作品「檜図(ひのきず)」を見ながら「枝ぶりがぐちゃぐちゃ。この破滅的な勢いを覚えておくと、今回の作品に似たような枝ぶりが出てくるのに気付く」と指摘。山本さんは「モチーフをものすごく大きく描く『大画(たいが)』様式を取っていた」と永徳の画風を解説した。

 次に、秀吉に見いだされて永徳に入門、永徳亡き後「京狩野」の祖となった山楽の「唐獅子」については山下さんは「永徳の唐獅子と比べると非常に頭が小さい。新君くらいのバランスだよね」と笑いを誘った。

 井浦さんは「山楽は好きです。絵もそうなのですが、長谷川派にグッと押されても裏方で支えて『仁義の人』という印象がある」と熱く語った。

 また、永徳という大黒柱を失ったこの時期、「狩野派は豊臣、徳川、朝廷に一門の絵師をそれぞれ派遣する『三面作戦』で生き残りを図った」と山本さんが解説した。

 永徳の長男、光信の「四季花鳥図屏風」に、州信(くにのぶ)という永徳が用いた印が押されたことについて山下さんは、「これは永徳ブランドとして押されたもの」と説明。光信については「下手右京」などと揶揄(やゆ)されるが、「江戸時代、永徳のスタイルを圧倒的に優れたものと見て悪い評価を下されたが、今の我々の目から見れば絵師としての力量を持った人だとわかる」と再評価した。山本さんも「“豪壮”を永徳が作り上げ、“華麗”を光信が作り上げた」と解説した。

 「秀吉像」では「それにしても手が小さい。秀吉の威厳を高めるために衣服を大きく堂々と見せようと描いた」と解説。展示では、正室のおねと側室の淀殿に挟まれる形を取っている。「これが今回の売りです」という山下さんの言葉に会場は笑いに包まれた。

 展示品の中でどれを持ち帰りたいか尋ねられると、井浦さんは「芒燕図(ぼうえんず)屏風」をあげ、「宮廷を担当する絵師のまなざしが地面の雑草に向けられている。描いた孝信の人柄がステキだなあと思う」と話した。また「狩野派の絵師たちに共通しているのは圧倒的に絵がうまいことですね」と感心していた。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI E XPRESS

 【ガイド】

 ■特別展「桃山時代の狩野派-永徳の後継者たち-」 5月17日(日)まで、京都市東山区茶屋町527の京都国立博物館明治古都館で開催。会期中、一部展示替えあり。午前9時30分~午後6時(金曜は午後8時まで、閉館の30分前まで入館できる)。月曜休館(5月4日は開館)。一般1500円、大学生1200円、高校生900円、中学生以下無料。問い合わせは(電)075・525・2473(テレホンサービス)。

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