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京都 高台寺ライトアップ 竹林照らす幽玄の光

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京都 高台寺ライトアップ 竹林照らす幽玄の光

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竹林にたたずむ山鹿傘は思い思いの格好でまるで遊んでいるようにも見えた=2014年10月21日、京都市東山区の高台寺(田中幸美撮影)  弊紙SANKEI EXPRESS連載「日本遊行-美の逍遥」でおなじみの俳優でクリエイターの井浦新(いうら・あらた)さん(40)が手掛けた、北政所(きたのまんどころ、ねね)ゆかりの名刹(めいさつ)、高台寺(こうだいじ)(京都市東山区)の夜間特別拝観のライトアップが話題だ。京都では各寺が趣向を凝らしたライトアップが秋の風物詩になっているが、高台寺は女性を中心に毎年特に人気が高い。写真家としても活躍する井浦さんにとってライトアップは初めての経験。「過剰に演出するのではなく、そぎ落とした演出で、紅葉を最大に見せながら陰を生む『新好み』に仕上げた。自由に見て感じてほしい」と話す。

 ライトアップのテーマは「悠久-光と陰-」。メーンとなる方丈(ほうじょう)の枯れ山水庭園「波心庭(はしんてい)」をはじめ、千利休の意匠(いしょう)による2つの茶室「傘亭(かさてい)」と「時雨亭(しぐれてい)」(いずれも国の重要文化財)、さらに竹林や臥龍池(がりょうち)など境内全域にわたってライトアップを施し、「新好み」の幽玄の世界を生み出した。

 波心亭では、白砂の上に大宇宙の真理をさとす禅語「○△□」をかたどった白、赤、紫の番傘計81張りを配置。次第に色ずくであろう紅葉を効果的に見せるため、番傘に直接照明をあてるなど過剰な演出を避け、番傘の内側に柔らかい光を照射するなどして質感を持たせた。さらに白砂に描いた「波心」という文字も白い光によって白と黒のコントラストを表現。ライトアップは26シーンあり、順次転換して3分41秒で完結する。

 傘亭には、井浦さんの提案で秀吉とねねに見立てた青と赤2張りの山鹿傘(やまががさ)がたたずむ。傘亭と土間廊下で結ばれた二階建ての茶室、時雨亭では、大河ドラマでおなじみの軍師、黒田官兵衛などを見立てた山鹿傘が置かれた。2つの茶室を後にして、竹林へと近づくにつれ、赤や紫の番傘がまるで遊んでいるかのような光景が目に飛び込んでくる。

 ≪番傘の戯れ 大宇宙の真理≫

 監修を務めた井浦さんが、高台寺を舞台にして紡いだ物語をプロデューサーで作庭家の北山安夫さん(65)に伝え、2人で話し合いを重ねながらライトアップを具現化させたという。傘亭の中から生まれた傘たちが飛び出して、百鬼夜行のように飛び跳ね、竹林に降りてきて戯れ、最後に波心庭で○△□の形となるというのがストーリーだ。井浦さんは「境内の物語を追いながら堪能してほしい」と話す。また、「(波心庭の)番傘は花びらのようにも見えるし、断定した花でもない。これという決まりはないので自由に感じ取ってほしい」とも。

 NHKの教養番組「日曜美術館」での司会や井浦さんの写真を目にした高台寺執事長(しつじちょう)の後藤典生(てんしょう)さん(66)が昨年10月、「井浦さんの考える心や日本の美をライトアップで表現してほしい」と依頼。「歴史ある高台寺で一つの挑戦という思いで取り組んだ」という。

 何度も足を運んで写真撮影をしたり、座禅を組んだりする中で井浦さんの心をつかんだのは傘亭の存在。内側から見た番傘を開いたような素朴な造形にひかれ、「これまで持っていたお茶室の概念を気持ちよく壊してくれた」という。ちょうどそのころ、取材で訪れた熊本県山鹿市で出合ったのが山鹿傘。日本の手仕事や匠の技を学び伝える活動をライフワークとする中で、粋でありながら力強さを兼ね備えた山鹿傘に魅せられた。

 山鹿傘の素材である竹、高台寺の竹林と傘亭…。「すべてが1つになったときに、ライトアップのイメージがひらめいた」と振り返る。さらに、高台寺建立には、初代熊本藩主の加藤清正の尽力があった史実も知り、高台寺と熊本との浅からぬ因縁を改めて感じたという。

 井浦さんのアイデアを阿吽(あうん)の呼吸で表現した北山さんは「複雑なようで複雑でない。一人一人が違う思いで感じてくれたら幸せ」と話す。また、後藤さんは「仏教では“におう”という言葉がある。鼻でかぐことではなく、コントラストの鮮やかさだと思う。鮮やかに生きるということを表現したライトアップ」と非常に満足そう。井浦さんは「高台寺には華やかなものとわびさびのような両極端が共存する。それを作り、守ってきた方々の変わらぬ心と思いを受け止めて悠久というテーマにしました」と話す。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 井浦新さん監修の高台寺秋の夜間特別拝観におけるライトアップ「悠久-光と陰-」は、12月14日(日)まで、午後5~10時(受け付けは午後9時30分まで)。大人600円、中高生250円、小学生以下無料。問い合わせは(電)075・561・9966高台寺まで。

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