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琳派400年記念ファッションショー 京の町衆が育てた独特美学

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琳派400年記念ファッションショー 京の町衆が育てた独特美学

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琳派(りんぱ)400年イベントのオープニングで華麗なダンスを披露するマイケルダンスパフォーマーのMASAKIさん。壁画絵師の木村英輝さんの描いたジャガーの屏風絵をバックに、木村さんのコイの絵をモチーフにしたジャケットで登場した=2015年1月12日、京都市上京区の京都府立文化芸術会館(田中幸美撮影)  俵屋宗達(たわらやそうたつ)や尾形光琳(おがたこうりん)に代表されるデザイン性と装飾性に富んだ芸術様式、琳派(りんぱ)誕生400年を記念した連続講座「琳派が翔(か)ける」が12日、京都市上京区の京都府立文化芸術会館で開かれ、世界的ファッションデザイナーのコシノジュンコさんが琳派をイメージした衣装を披露するファッションショーを行った。

 今年2015年は、琳派の創始者とされる本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)が京都市北部の鷹峯(たかがみね)に芸術村を作って400年の節目にあたるため、京都府や市などが記念事業を行っており、昨年11月から開催されている連続講座もその一環。琳派の歴史や江戸琳派などテーマを設けて行われており、3回目となる今回の講座は琳派がデザインに与えた影響などがテーマとなった。

 全国各地の壁や襖に、大胆なデザインと金を配した派手な色合いで人を引きつける絵を描く壁画絵師の木村英輝さん(72)も自作の巨大な幕をバックにトークショーを繰り広げた。会場は満席で立ち見が出るほどの盛況ぶり。木村さんは「琳派にはあまり関心がなかったが、宗達は好き」と切り出し、為政者や大きな寺のお抱え絵師となった狩野派などの絵師集団とは異なり、琳派は町衆の中で育まれたと説明。「ベニスの商人がベニスの町の文化を作ったように、京都も為政者でなく町衆が琳派を作ったのが面白い」と話した。

 さらに「独特の美意識や四季折々の祭事を継承してきた京都の町だからこそ琳派は生まれ、宗達も京都の町だからこそ出てきた」と独自の分析を披露した。

 ≪未来にもずっと続く一つの着方≫

 世界的ファッションデザイナーのコシノジュンコさんは、琳派が誕生した江戸時代の町人の遊びの代表である花札をイメージしたイブニングドレスなど5点を披露した。

 ファッションショーは3分半という異例の短さだったが、「一瞬の方が脳裏に焼き付いているだろうと思っている」とコシノさん。

 3点は、琳派を代表する絵師、尾形光琳(おがたこうりん)が描いた燕子花(かきつばた)をはじめ、花札の絵柄となっている鶴、鹿をモチーフにしたアシンメトリー(非対称)なイブニングドレスだ。通常の帯幅の3倍もある150センチ幅の金箔(きんぱく)と漆で織った西陣織の帯を輪にして、ドレスを作ったという。残りは、松模様の打ち掛けに前結びの花魁(おいらん)スタイルを採用したドレスと、オブジェのように誇張された金の帯に波模様のドレス。「どこで着るのという現実的なことではなく、現実離れすることで現実になっていく。琳派は未来にもずっと続けていく一つの着方」と話した。

 またコシノさんは「町人の遊びの文化から面白がってデザインが始まった。あの時代からデザインが続いているということは、デザイン文化として世界一だと思う」と指摘。

 さらに自身の衣装も着物を着る大変さから解放されたくて合理的に考えたTシャツドレス。「意識しなくても、結果的に琳派につながった。日本の美意識の中にいつの間にやら紛れ込んで琳派のデザインができてくるのでは」と話していた。

 また、モデルが手にしていた金と銀のうちわは、京都伝統工芸大学校と京都美術工芸大の学生が協力して制作した。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■琳派(りんぱ) 桃山時代後期に興った芸術上の流派。書家で陶芸家の本阿弥光悦と絵師の俵屋宗達が創始者とされ、尾形光琳・乾山兄弟によって発展、酒井抱一、鈴木其一によって江戸でも花開いた。派を名乗りながらも家系や師弟関係ではなく、時間も場所もかけ離れた芸術家の私淑によって継承されたのが特徴。背景に金銀箔を使い、パターン化した形を繰り返すなど、デザイン性や装飾性に富んだ画風を生みだし、印象派の画家にも影響を与えた。

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