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すべての人にお気に入りの1着を 意識するのは「イノベーション」 デシグアル
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デシグアル定番の曼荼羅シリーズのロングカーディガン(左、1万6900円)とワンピース(右、1万4900円)。左右の袖の色が、あしらったリボンの色がそれぞれ異なる=2014年12月19日、東京都渋谷区神宮前(立浪聡美さん撮影)
スペイン発のデシグアルは、おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかさと、地中海の太陽の光があふれるような明るさを持つ。「元気で快活」「華やかでセクシー」といったベースがある鮮やかで斬新なデザインは、誰にでもお気に入りが見つかり、着ているだけで楽しくなる服作りを目指している。旗艦店の東京・原宿店には外国人客も目立ち、幅広い世代のファンを集めている。
12月上旬の平日午前、東京・原宿の「デシグアルストア原宿」には、小さい女の子2人を連れたオーストラリア人観光客の一家が買い物を楽しんでいた。子供服やスカーフを数万円分購入。「日本に来てデシグアルを知ったという外国人のお客さまも多くて、在住の方から訪日客まで、10万円単位でまとめ買いする方も珍しくありません」とスタッフは言う。
店一番の売れ筋というワンピースは曼荼羅がモチーフで、袖の左右には異なる色のリボンがつく。パッチワーク風コートは、ウールやニットを組み合わせた素材にアップリケをあしらったデシグアルの定番。中綿入りコート(2万9900円)には英語やスペイン語で「LOVE」「HAPPY」など遊び心いっぱいの文字が刺繍(ししゅう)されている。
顧客のメーンターゲットは20代後半~30代前半に置き、原宿店には流行の先端を探す若い世代や芸能人も多く訪れる。メンズ、ウィメンズはカジュアルからドレスアップまで。加えて子供服、ショールやバッグなどの小物も扱う全方位の品ぞろえで、価格は数千円~数万円と手ごろ。休日には3世代の家族連れの姿もあり、幅広い層が思い思いにおしゃれを楽しめる魅力がある。
デシグアル(Desigual)とはスペイン語で「同じではなく、少し違う」という意味を持つ。1984年にブルゾンのパッチワークから始まったデシグアルは、鮮やかな色使いから人気が広がった。バルセロナの本社は地中海の目の前にあり、イマジネーションの源泉はビーチ。約50人のデザインチームがシーズンごとに1000種類もの新作を生み出し、全体の3~4割をスペインほか欧州で生産。店舗は欧州をはじめ米国、南米など世界中で展開している。
デシグアルにとって日本は欧州、米国と並ぶ重要な市場との位置づけで、2年前に旗艦店としてデシグアルストア原宿をオープン。順次、店舗を増やし、日本での売上高は伸び続け、現在は19店を構える。
来日したアジア担当副社長のジョルディ・バルセルスさん(42)は「常に新しいものを求めている日本人の感性に合ったのだと思う。新規出店を進め、認知度を上げていきたい」と話す。各国の店舗で同じ製品を扱っているが、日本では「白と黒をモチーフにしたスカートやバッグが人気」という。
同じスペイン発のZARAや、スウェーデン発のH&Mといったファストファッションとは一線を画す。「意識するのは同業他社ではなく、むしろ異業種でイノベーション(革新)を起こしたアップルやナイキといった企業。どんどん新商品を出し、受け入れられていく企業でありたい」とバルセルスさん。
最近では仏デザイナーとのコラボレーションによるシリーズを発表。子供服ではディズニーとのコラボも人気が高い。目標は「世界中のすべての人のワードローブに1着のデシグアルを」。個性は強くても、種類が豊富なので必ず自分の気に入った品が見つかるはず-という思いからだ。
バルセルスさんが「いま一番のオススメ」と見せてくれたのは白地に鮮やかな花をプリントし、スパンコールで彩ったコットンのセーターだった。最近とある都内の高級ホテルのダイニングで、同じセーターを着こなしたシニア女性を見かけた。おそらく20歳代の女性が着ても同じようにすてきに見えるだろう。デシグアルは、そんな不思議な個性を持つブランドでもある。(文:藤沢志穂子/撮影:立浪聡美/SANKEI EXPRESS)