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ストールで異文化をコラボレーション EPICE青山店
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店内には代表的なデザインのストールが飾られている。右から「ダッチ・フラワー」(4万1580円)、カーディガン(5万2920円)、ボーダー柄ストール2色(各2万8080円)、チェック柄ストール(2万7000円)=2014年12月18日、東京都港区(寺河内美奈撮影)
色鮮やかなストールは、ファッションのスパイスになる。そんな思いを伝える仏「EPICE」の日本第1号店が12月、東京・青山にオープンした。デンマーク出身の2人のデザイナーが1999年に創業したブランドで本拠はパリ、デザインはコペンハーゲン、製造はインドとさまざまな文化が融合した不思議な魅力を持つ。異文化の伝統と技術を尊重したコラボレーションを目指しており、3月には日本企業と開発したオリジナルの傘を発売する。
12月にオープンした青山店、一番目立つディスプレーが、深い赤を基調に花をプリントした「ダッチ・フラワー」。17世紀に活躍したオランダの画家、フェルメールの作品にヒントを得たこの秋冬向けの新作で、パリのエスプリを感じさせつつも落ち着いた印象を与える。同じく新作「切手」シリーズは日本に中国、モンゴルなどアジア圏の切手をあしらった。いずれもその国の文化に敬意を表した作品だ。
「EPICE」はフランス語で「スパイス」の意味。ストールでファッションにアクセントを与える狙いがある。旅先に1枚持っていけば、おしゃれにも防寒具にも使えて便利。個々の作品にはテーマがあり、背景にストーリーがあるのが特徴だ。
青山店オープンを記念して制作されたシルク100%のスカーフは、コペンハーゲンにある遊園地チボリ公園のサーカステントをイメージ、自転車で綱渡りをしている大道芸人が描かれている。
2015年春夏シーズンの統一テーマは「アウト・オブ・アフリカ」。「愛と悲しみの果て」という邦題で1985年に日本でも公開された米映画で、20世紀初頭にアフリカに渡り、コーヒー農園を作ろうとしたデンマーク人女性が主人公。「あの困難な時代に生き抜いた女性のたくましさと、アフリカの明るさをモチーフにしたシリーズになります」と創業者の一人でアートディレクターのベス・ニールセンさんはほほ笑む。
創業から15年、EPICEは日本を含む世界中で、主に高級百貨店やセレクトショップなどで展開されてきた。青山店はフランス以外で初となる直営店で、アジアの旗艦店としての役割も果たす。
オープンに合わせて来日したベスさんは、日本出店の動機を「日本は長い歴史がある国で、テキスタイル(繊維)への理解も深く、EPICEの魅力も分かってもらえるはず。市場も大きい」と話す。
EPICE誕生のきっかけは30年以上前にさかのぼる。デンマーク出身でパリに渡り、クリスチャン・ラクロワやケンゾーで働きながらキャリアを積んでいたベスさんが、講師を務めていたアートスクールの生徒ヤン・マッケンアワーさんに出会い、そのデザインの才能を見いだしてスカウト、一緒に仕事を始めた。その過程でインドに織物の調達に行き、その魅力に強くひかれた。
「インドの歴史に哲学、ヒンディー語など全てがインスピレーションの素」とベスさん。流行に追われるファッション業界にも疲れ、「もっと長く愛されるものを作りたい」とストールのブランドを立ち上げることにした。素材のシルクやウール、コットンなどの調達とプリントや織物など、製造は原則としてインドの契約先の工房で行い、現在はベスさんがパリでアートディレクションを、ヤンさんがコペンハーゲンでデザインチームを統括する。
EPICEの作品は、歴史と芸術を背景としたアートを「身にまとう」感覚で作られている。異文化への造詣が深いベスさんは日本文化にも関心を寄せ「和紙や陶芸、小津安二郎の映画はとても魅力的」と話す。
その日本の技術を使った傘を3月から発売する。骨が丈夫で軽くて壊れにくく、紫外線をカットする遮光機能を備えたポリエステル素材の傘の技術は日本が先端を行く。デザインは、スペインで見つけたシャッターの落書きからヒントを得た遊び心満載のものから花柄、縁取りを刺繍(ししゅう)したものまでさまざま。ストールで培ったデザイン性が生かされている。あわせてトートバッグの取り扱いも開始。
「今後はホームプロダクツの種類を増やしていきたい。もっと若いスタッフも採用して若いエネルギーも取り入れていくつもり」とベスさんは意気込む。
青山店には開店以来、個性的なストールを探すマダムや、プレゼント用や自分のための品を買いに求める男性客などが訪ねている。ふらりと訪ねて、無国籍な魅力に浸ってみよう。(文:藤沢志穂子/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS)
※価格は税込みです。