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【箱根火山活動】住民「火山の町、よくあること」 レベル引き上げ判断 御嶽山の教訓

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【箱根火山活動】住民「火山の町、よくあること」 レベル引き上げ判断 御嶽山の教訓

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通行止めとなった箱根山・大涌谷(おおわくだに)方面への道路には報道陣や道路関係者が集まっている=2015年5月7日午前、神奈川県足柄下郡箱根町(宮崎瑞穂撮影)  小規模な噴火が発生する可能性があるとして、噴火警戒レベルが引き上げられた神奈川県の箱根山。7日も火山性地震が観測され、引き続き警戒が続けられている。

 ゴールデンウイーク明けの温泉街は、通常通りの生活を送る住民、観光客減少に危機感を募らせる町と観光業界、逆に狙い目と考える観光客と三者三様の状況の違いが際立っていた。

 山の中腹にある強羅温泉の早朝4時ごろ。就寝中に枕の下からゴーというような地鳴りが聞こえて飛び起きたが、ほかには何事もなく朝を迎えた。

 「火山の町、箱根ではよくあること」と地元で建具店を営む石井英秋さん(48)。「公表されない地震で揺れることも結構ある。噴火は怖いけど、まだ焦る状況じゃない」

 連休が明け、地元の小中学校も通常通りの授業を始めた。立ち入り禁止となっている大涌谷(おおわくだに)近くでも、住民は普段と変わらない生活を続ける。

 一方、観光業への影響は大きい。観光客の宿泊キャンセルが相次ぐ箱根町では7日午前、町内の温泉旅館約100軒でつくる「箱根温泉旅館協同組合」と今後の対策について協議。箱根町企画観光部の吉田功部長は「箱根のごく一部が立ち入り禁止なだけ。正確な情報を発信することが風評被害防止のために重要」と話し、立ち入り禁止エリアなど情報を発信し続けることを確認した。

 「おおげさに騒ぎ立てられると事態が悪化する」と、宿泊施設や土産物店などの観光業者は報道による風評を心配する。

 大涌谷を通るルートの運休が続く「箱根ロープウェイ」の早雲山駅では、急な旅程変更が難しい海外からの観光客が訪れるほかは、ひっそりと静まりかえっていた。担当者は「早く騒ぎが終息してほしい」と嘆く。

 箱根町は、宿泊施設に温泉の湯を供給する業者などについては7日から保守管理のため午前9時から約2時間、避難指示区域内に立ち入ることを認めた。対応を受けて早雲山駅内では、大涌谷駅で働く売店の従業員らを集めてミーティングが行われていた。

 したたかな観光客も

 揺れる地元の観光業界に対し、したたかな観光客も。大涌谷を見通せる位置にある箱根ガラスの森美術館では、入場者が白煙が上る火口を見上げて歓声を上げていた。東京都杉並区から訪れた主婦、斎藤利子さん(73)は「空いていると思って遊びにきた。名物の黒たまごが食べられないのは残念だけれど、行けるところまで行って、めいっぱい楽しみたい」と笑顔だった。

 箱根ガラスの森美術館では万が一に備えて、手袋やマスク、水など防災対策グッズを増強。岩田正崔館長は「現状で怖いことは何もない。お客さまには安心して楽しんでほしい」と話した。(三宅令/SANKEI EXPRESS

 ≪レベル引き上げ判断 御嶽山の教訓≫

 噴火警戒レベルの引き上げ判断をめぐっては、2014年9月の御嶽山(おんたけさん、長野、岐阜)の噴火でも、直前に火山性地震頻発などの予兆があったが、平常の「1」に据え置かれたままだったことで、その是非が注目された。

 今回の引き上げについて、気象庁は震源などの問題とし、御嶽山噴火時の対応の影響を表面的には否定するが、専門家は「判断が非常に早く教訓が生かされている」とみている。

 箱根山で懸念されているのは、御嶽山と同様の「水蒸気噴火」で地下の深いところにある、マグマに熱せられた地下水が噴出するもの。

 マグマが噴き出る「マグマ噴火」、地下水とマグマが触れ爆発する「マグマ水蒸気噴火」と比べ、マグマの明らかな移動といった地殻の変化が現れにくいとされ、火山に詳しいNPO法人「防災情報機構」の伊藤和明会長は「予想するのは難しい」と説明する。

 ただ、御嶽山の噴火前には地震活動が活発化。直前に一時小康状態となったことなどから警戒レベルは引き上げられなかったが、伊藤会長は「(地震頻発などで)火口周辺の立ち入りを規制していれば被害は防げた」とみている。(SANKEI EXPRESS

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