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トヨタ 日本初の最終益2兆円超 営業利益も2年連続過去最高

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トヨタ 日本初の最終益2兆円超 営業利益も2年連続過去最高

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2015年3月期連結決算を発表するトヨタ自動車の豊田章男社長=2015年5月8日午後、東京都文京区の東京本社(荻窪佳撮影)  トヨタ自動車が8日発表した2015年3月期連結決算は最終利益が前期比19.2%増の2兆1733億円で、日本企業として初めて2兆円を突破した。本業のもうけを示す営業利益も20%増の2兆7505億円となり、いずれも2年連続で過去最高を更新。16年3月期の最終利益も3.5%増の2兆2500億円と予想している。

 15年3月期は消費税増税の影響で国内販売が苦戦したが、北米や欧州で販売台数が増加。コスト削減に加え、円安基調で輸出の採算が改善したことも業績を押し上げた。売上高は6%増の27兆2345億円で7年ぶりに過去最高となった。

 16年3月期については営業利益が1.8%増の2兆8000億円、売上高は1%増の27兆5000億円を見込んだ。日本や新興国の販売減、ルーブルなどの通貨安が営業利益を450億円押し下げるため、伸び率は前期に比べ鈍化する。

 一方、研究開発費は前期比455億円増の1兆500億円、設備投資も226億円増の1兆2000億円。豊田章男社長(57)は記者会見で「持続的成長ができるよう真の競争力向上に向けて取り組む」と説明した。世界販売台数(ダイハツ工業と日野自動車含む)は過去最多だった前期(1016万8000台)から微減の1015万台を見込む。

 ≪成長への分岐点 工場新設再開や商品力強化≫

 トヨタ自動車にとって、今期は「踊り場」から新たな成長への「分岐点」となる。凍結していた新工場の建設を決めたほか、車台などの共通化を年内に発売する新型車から採用、組織やグループの改革にも乗り出した。3兆円に迫る利益を確保しつつ世界販売1000万台超を維持することができるか、トヨタは未踏の領域に踏み込む。

 新たな仕組み生む

 「今年は持続的成長に向けた歩みを着実に踏み出すのか、それとも元に戻るのか、大きな分岐点になる」

 豊田章男社長は8日の記者会見でこう強調した。

 トヨタは拡大路線の反省から2013年以降、工場新設を凍結。「意志ある踊り場」として既存工場の稼働率や生産性向上などを優先してきた。

 ただ今年4月にメキシコと中国の工場新設を発表。今年の世界販売首位は独フォルクスワーゲン(VW)に明け渡す可能性が高いが19年には生産能力を30万台増やし追撃する構えだ。

 課題だった商品力強化に向けた対策も打っている。

 車台や部品を一体開発してコストを削減し、トヨタ車全体の性能を向上する共通化戦略「TNGA」を今年発売するハイブリッド車(HV)「プリウス」の新型車から採用。20年頃には販売する車の半数に展開する。

 「新しい仕事の仕組みを生み出さなければ、これからの成長を語ることはできない」。かねてから豊田社長は世界1000万台態勢についてこう強調してきた。

 3月に発表した新たな役員体制は、先進国を担当する「第1トヨタ」のトップとして、初の外国人副社長となるディディエ・ルロワ氏を就任させた。北米や日本が舞台の第1トヨタはトヨタの屋台骨。海外出身の人材でグローバル展開を推し進める。

 副社長の役割も変更。社長の補佐として中長期視点で経営全般を見る。現場に近い専務などの各部門の責任者に意思決定を委ねる体制に改めた。

 グループ改革も

 グループ改革も待ったなしだ。デンソーとアイシン精機の役員をトヨタの役員に受け入れる一方、系列の部品メーカーの再編を加速。昨年11月には、ブレーキやディーゼルエンジンなど各社で散らばっていた事業の集約を打ち出した。

 トヨタ幹部は「これまで内向きに争っていたが、グループ全体で競争力を高めないといけない」と話す。

 自動運転や環境技術など研究開発領域は広がっており、海外では独ボッシュなどメガサプライヤーと呼ばれる部品大手が存在感を増している。TNGAの成功にも系列各社の底上げが欠かせない。多様なブランドを抱えるライバルのVWグループのように、トヨタも部品メーカーやダイハツ工業などを含めたグループ経営の巧拙が、今後は競争力を大きく左右する。

 矢継ぎ早の改革に「現場が少し混乱している」(幹部)との声もある。ただ、豊田社長は「体力がついてきた今こそ体質改善に取り組む」と迷いはない。

 新興国市場の低迷や円安の利益押し上げ効果の剥落などリスクもくすぶる中、トヨタの新たな挑戦の真価が問われる。(田村龍彦/SANKEI EXPRESS

 ■トヨタの業績 リーマン・ショックを受けた2009年3月期は連結営業損益が4610億円の赤字に転落したものの、10年3月期には黒字を確保した。東日本大震災の影響が直撃した12年3月期は営業減益に陥った。14年3月期の営業利益は消費税増税前の駆け込み需要や円安効果が寄与し、2兆2921億円と6年ぶりに過去最高を更新していた。

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