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春闘交渉スタート 自動車そろって「6000円」要求 ベア上乗せへ「勝負」 政府も後押し

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春闘交渉スタート 自動車そろって「6000円」要求 ベア上乗せへ「勝負」 政府も後押し

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富士重工業の本社で、吉永泰之社長(左)に要求書を提出する労組の山岸稔執行委員長=2015年2月18日、東京都渋谷区(三尾郁恵撮影)  トヨタ自動車など自動車メーカーの各労働組合が18日、ベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分として、昨年を上回る水準の月額6000円をそろって求める要求書を経営側に提出し、約1カ月にわたる2015年春闘の労使交渉が始まった。業績回復を背景に経営側は、2年連続でベアを実施する方向で、昨年実績への上乗せをめぐる攻防となりそうだ。

 自動車総連に加盟する各労組に加え、東芝とNECの労組も18日に月額6000円を求める要求書を提出。主要電機メーカーの各労組も19日に出そろう。3月18日に自動車や電機を含む大手企業の回答が出そろう見通し。

 春闘の相場形成に大きな影響力を持つ自動車や電機業界が牽引(けんいん)役となり、中小や地方の企業に賃上げの動きが広がるかも焦点になる。

 この日午前、東京都内の富士重工業本社で、労組の山岸稔執行委員長が吉永泰之社長に要求書を提出。賃金改善分が昨年の要求と比べて2500円増、年間一時金(ボーナス)は昨年と同じ6カ月分を求めた。

 トヨタや日産自動車の労組も経営側に要求書を手渡した。トヨタの労組は賃金改善分の要求を前年より2000円上乗せした。一時金は昨年と同じ6.8カ月分。日産なども改善分は6000円と足並みをそろえて交渉する。

 自動車業界は消費税の増税後に国内販売の低迷が続くが、主力市場の北米が好調なほか、円安効果で収益が大幅に改善し、好業績の企業が目立つ。ただ賃金を底上げするベアには慎重な経営者も多く、水準をめぐり厳しい交渉になりそうだ。

 大阪市で記者会見した連合の古賀伸明会長は「昨年は賃金水準を引き上げることができた。今年はその流れを加速し、広げることが重要。労使とも大きな責任を担っている」と強調した。

 ≪ベア上乗せへ「勝負」 政府も後押し≫

 2015年春闘の労使交渉が幕を開けた。労働組合は昨年以上のベースアップ(ベア)を狙い攻勢を強めるが、大手企業には将来的な人件費増につながるベアへの慎重姿勢も残る。中小企業や非正規の労働者は格差是正が進むか不安を隠せない。働く人の生活を守れるのか、労使にとって正念場の春闘になる。

 「若い世代に希望」

 「将来にわたって賃金が上がる希望があると、若い世代に発信しないといけない」。連合傘下で、自動車や電機などの産業別労組(産別)でつくる金属労協の相原康伸議長は1月、東京都内の会合で強調した。

 連合は昨春闘で15年ぶりの高水準になる賃上げ率2.19%を実現した。金属労協はそれを追い風に、今春闘で昨年の約2倍に当たる6000円以上のベアを要求。相原議長は「経営者が果たす役割は勤労者の生活を守った上で企業の成長を目指すことだ」と主張。別の産別幹部は「今年は『生活春闘』だ」と力を込める。

 経済界に圧力

 連合は昨年から、継続的な賃上げ傾向をつくり出すためには、今春闘が勝負になると見定めていた。古賀伸明会長は「経営者は多少無理があっても国民所得を上げるため踏み込むときだ」と強気の姿勢を崩さない。

 2年連続で「官製春闘」を仕掛ける政府も賃上げ実現に躍起だ。連合幹部によると、政府と経済界、労働団体による昨年12月の政労使会議で、安倍晋三首相は一昨年にも増して強い調子で賃上げを迫った。12日の施政方針演説でも「景気回復の温かい風を全国津々浦々に届ける」と宣言した。

 政府の圧力に経済界も積極対応を各企業に呼び掛ける。大手で好業績が相次ぎ、経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事は「(昨年の賃上げ率を)クリアする条件は整っている」と強調する。とはいえ、ベアは将来の経営に大きく影響し、特に昨年も実施した企業には慎重な考えも少なくない。

 中小零細は不透明

 大手との賃金格差が大きい中小企業労組を多数抱える産別のJAMやUAゼンセンなどは、「生活の維持向上」を旗印に連合方針を上回るベア要求を掲げる。日本商工会議所の三村明夫会頭は「(中小企業で)防衛的な賃上げが増えるかもしれない」と分析。人材確保のため、大手の賃上げに同調せざるを得ないとの見方を示した。

 だが、消費税増税や円安による物価上昇で個人消費が停滞。中小労組を多数抱える、ある産別役員は「タクシーや住宅などで売り上げが不振だ。全国の労組から『仕事が減った』『去年よりも厳しい』との声が相次いでいる」と明かす。中小零細にまで賃上げが広がるか不透明さは否めない。

 非正規労働者の待遇改善も重要課題だ。都内の飲食店で働くアルバイトの男性(42)は「賃金は良くなってきた」と話す。時給は1100円で掛け持ちすれば月収は20万円程度になる。リクルートジョブズの調査でも昨年12月、首都圏におけるアルバイト・パートの募集時の平均時給は1005円と、09年12月以来の高額だった。

 ただ、男性は20代から思うような正社員の職を得られず、ほとんどが非正規雇用。雇い止めも経験した。「景気が悪くなれば、時給が下がるのでは」と漏らす。年金など社会保障への不安もあり、正社員の就職先を増やしてほしいと訴える。(SANKEI EXPRESS

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