SankeiBiz for mobile

賃上げで合意 年功見直しは先送り 政労使会議

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

賃上げで合意 年功見直しは先送り 政労使会議

更新

経済の好循環実現に向けた政労使会議であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相(左から2人目)=2014年12月16日午前、首相官邸(酒巻俊介撮影)  政府は16日、関係閣僚と経済界、労働界の代表が意見交換する「政労使会議」を首相官邸で開き、経済の好循環実現に向け「企業収益の拡大を来年春の賃上げや、設備投資に結びつけていく必要がある」と明記した合意文書をまとめた。賃上げで合意文書を取りまとめたのは2年連続。来年の春闘の議論にも影響を与えそうだ。

 安倍晋三首相は会議で「経済界は賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図ってほしい」と強調し、消費税率10%への引き上げを予定する2017年4月まで賃上げを継続する重要性を訴えた。併せて円安で好業績の輸出型企業に対しては、設備投資や下請け企業へ支払う代金についても配慮するよう求めた。

 政労使会議では昨年の合意文書にも賃上げ方針を盛り込み、14年春闘で大企業を中心に賃金を一律に引き上げるベースアップ(ベア)の実現につなげた。

 このほか合意文書では、女性の就労促進のため、配偶者控除や配偶者手当などの見直し、長時間労働の是正を検討することも盛り込んだ。

 ただ、年齢や勤続年数に応じて給料が上がる「年功序列型賃金」の見直しや労働時間規制の緩和に関しては「仕事・役割、貢献度を重視した賃金体系とすることや、子育て世代への配分を高める方向へ賃金体系を見直すことが一案」と言及するにとどめた。

 ≪脱デフレ最優先 目立つ踏み込み不足≫

 政府、経済界、労働界の代表は16日、「政労使会議」を開き、2015年春闘での賃金引き上げの実現を盛り込んだ合意文書をまとめた。「アベノミクス」による経済の好循環を継続するには、前回に続く賃上げが“即効薬”になることは間違いない。総選挙で信任を得たアベノミクスへの協力では労使の足並みがそろっており、春闘の焦点は具体的な賃上げ水準に移る。

 2年連続の「異常事態」

 合意文書は、今秋の会議再開後の焦点となっていた年功賃金制度の見直しは一案とするにとどめ、事実上先送りするなど踏み込み不足も目立った。

 背景には、4月の消費税率引き上げ後に個人消費が低迷し、景気回復がもたつく中、デフレ脱却を最優先とすることがある。労使の考えの違いが大きい年功賃金制度を棚上げし、労使が一致できる賃上げに議論を集中させる狙いだ。

 本来は労使の交渉で決まる賃金に関し、2年連続で政府が介入する“異常事態”となったが、「今の日本経済は危急存亡の時で、政労使は不退転の決意でデフレから脱却しなければならない」(経団連の榊原定征(さだゆき)会長)など、賃上げの重要性に対する考え方は労使とも一致している。

 労使の争点となる賃上げ幅について、経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事(68)は16日の定例会見で、前年の月例賃金の平均引き上げ率2.07%(連合まとめ)を例に挙げ、「前年と同水準の賃上げが実現すれば、落ち込んでいる実質賃金とのギャップを埋められるのではないか」と述べた。

 一方の連合も、毎月の給与水準を引き上げるベアについて、2%以上を要求する方針を掲げるが、同じ「2%」でも、定期昇給を含む数字と、ベアだけの数字では意味が違う。「前年を発射台にし、労組側がどれだけ積み上げていけるか」(労組関係者)が焦点だ。

 経営側は慎重

 春闘相場に影響力のある自動車業界は北米販売の増加や円安で各社とも好調な業績が続く。一方で、物価は上昇しており、組合員には賃上げへの期待が高い。

 しかし、経営側にはベアに対して慎重な考えが強い。14年9月中間決算で過去最高の最終利益を計上した富士重工業の吉永泰之社長でさえ、「純粋に国際的な競争力が増したとはいえない。(ベアで)コストを上げて本当に大丈夫なのか」と指摘。三菱自動車の益子修会長も「今後の景気は厳しい面があるという認識を持っている」と話す。(小島清利/SANKEI EXPRESS

ランキング