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【Q&A】年功序列型賃金見直し 子育て世代や若者に手厚く

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【Q&A】年功序列型賃金見直し 子育て世代や若者に手厚く

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年功序列の廃止を決めた日立製作所の本社=2011年8月4日、東京都千代田区丸の内(中鉢久美子撮影)  政府と経済界、労働団体の代表が雇用や賃金を議論する「政労使会議」で、年功序列型賃金の見直しが焦点となっています。

 Q 年功序列型賃金とは何ですか

 A 企業や官公庁で年齢や勤続年数を重ねるに連れて賃金が上がっていく仕組みのことです。一つの企業で定年まで勤め上げる終身雇用と並び、戦後の経済発展を支えた日本型雇用慣行の柱として定着しました。

 Q どんなメリットがあるのですか

 A 企業への帰属意識や従業員間の連帯感が強くなるといわれています。従業員が時間をかけて技術を身につけたり経験を積んだりすることで、組織としての力が増し、企業の成長にもつながると考えられてきました。

 Q なぜ見直す必要があるのですか

 A 安倍晋三首相は、年長者の賃金が高くなる年功序列を見直すことで、子育て世代や若者を中心とした非正規労働者の収入を手厚くするべきだという考えを示しています。子育てでキャリアを中断した女性や優秀な外国人が働きやすくなり、就業人口が増えて社会が活性化するとの期待もあるようです。

 Q 企業の取り組み状況は

 A 経済が右肩上がりだった時代が終わると、多くの企業は増え続ける人件費を抑えるため新卒採用を減らしたほか、賃金上昇を緩やかにすることで負担を減らそうとしました。抜擢(ばってき)人事の障害になるとか、「事なかれ主義」が広がるといった年功序列への批判的な見方も強まり、部分的に成果主義を取り入れる企業が増えています。

 Q 年功序列型賃金をやめた企業はありますか

 A 日立製作所は10月から課長以上の管理職の賃金制度を改定し、年功的な要素を撤廃しました。若い人や外国人でも高い報酬を得られるようにするのが狙いと説明しています。経団連の榊原定征(さかきばら・さだゆき)会長が会長を務める東レは2003年度から管理職の賃金体系を成果主義に改めています。ITなどの新興企業や外資系企業では、もともと年功色がほとんどないケースもあります。

 Q 政労使会議の議論はどうなりそうですか

 A 年功序列の見直しは中高年層の賃下げや労働条件の悪化につながる恐れがあります。メンバーである連合の古賀伸明会長は見直しに反対の姿勢を示しました。政府が労使問題に口を出すことへの違和感も根強く、管理職以外の社員への拡大に慎重な企業も少なくありません。年内にまとめる合意文書で明確な方向性を打ち出すのは簡単ではなさそうです。

 ≪労働条件悪化の懸念も≫

 9月29日の政労使会議で年功序列型賃金の見直しが今後の論点として示されたが、安倍晋三政権下では、年収など一定要件を満たした労働者を残業代支払いの対象外とする、新たな労働時間制度の議論も本格化したばかり。「雇用改革」で政権や経済界から次々と攻勢を受け、労働側には、労働条件悪化への懸念や警戒感が高まる。

 「労使で議論してきた積み重ねが現在の姿。年功序列のカーブだけを見て解消すべきだというのは乱暴だ」。連合の古賀伸明会長は会議後、安倍首相が表明した年功序列賃金の見直しに反論した。

 会議では有識者代表として参加した高橋進・日本総研理事長が、年功序列見直しは、非正規労働者や子育て世代の処遇改善につながると主張する資料を提出した。一方の労働側は、年功序列を見直せば、より賃金の“成果主義”色が強まると反発。政権が導入を図る新たな労働時間制度が「時間ではなく、成果で賃金を支払う」と同じ方向を狙っていることも懸念に拍車をかけている。(SANKEI EXPRESS

 

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