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機械的秩序を絵画がかき乱す 「杉戸洋展 天上の下地 prime and foundation」 椹木野衣

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機械的秩序を絵画がかき乱す 「杉戸洋展 天上の下地 prime and foundation」 椹木野衣

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 その結果、どうなったか。驚くべきことに、杉戸は主展示室の全体を、一台の巨大なピアノに見立てて作り上げる離れ業をやってのけた。この広い部屋の中心を占拠する、東屋(あずまや)ともひさしの連続とも、小部屋ともつかない出入り自由な構造体は、実は、杉戸の発案による作品の一部なのだ。しかも、それが黒鍵5つからなるピアノの音階、1オクターブ分を示しているのである。

 ピアノとピアニストの駆け引き

 思えば、ピアノは楽器である以前に「機械」であった。それまで存在したオルガンやハープシコードといった鍵盤楽器の弱点をすべて改良し、新たに秩序立てることでピアノは生まれた。その意味で、ピアノは、まさに完璧な秩序を体現している。しかし同時に、そのことでピアノは、奏者よりも巨大で新しい権力にもなった。具体的に言えば、ピアノを弾いているようで、ピアノに弾かされているというような事態が起こったのである。

 このことを念頭におけば、本展での杉戸が、前川の幾何学的な建築という完璧な秩序=ピアノを前に、いかにそれを人である絵描き=ピアニストが弾きこなすか、という問題に直面していたことがわかるだろう。

このニュースのフォト

  • 「untitled」2009(提供写真)。(C)Hiroshi_Sugito
  • 「イーハトーヴ」の展示風景=2015年5月19日(提供写真)
  • 主展示室の展示風景=2015年5月19日(提供写真)
  • 主展示室の展示風景=2015年5月19日(提供写真)
  • 宮城県美術館の外観=宮城県仙台市青葉区(提供写真)

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