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50代半ばだからこそ描けた「魂の彷徨」 「界」著者 藤沢周さん

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50代半ばだからこそ描けた「魂の彷徨」 「界」著者 藤沢周さん

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 書くこともまた、自我をめぐることだ。「不思議ですよね…。自我が書かせるんだけど、書きながら自我を捨てようとする。夢野久作が『すべての近代小説は探偵小説である』と言っているんですが、まさにそう。すべての近代文学は自己をめぐる探偵小説なのではないかと。自己をめぐって書いていくと、自己が邪魔になる。自己をいかにほどいて、なくしてしまうか。なくしたときに書けたものって、すごいだろうと思うんですよね」

 日常の裂け目に身を投じるようにして開いた、新たな扉。「この作品を書くことで、世界、日常のひだに敏感になりましたね。今は違うタイプの長編を書いていますが、自分の方向性は、自失への欲望、官能に向いている。自分の原点は『言語以前』。ロゴスで構成された世界にとらわれず、違う言語で世界を描かなければならない。書くって、世界と刺し違えること。世界の実相を書いていくことは崩したくないな」

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  • もう一人、影響を受けた作家として「言語以前のところで書いているすごい方」と古井由吉さんをあげた。「『藤沢くんは言葉の結晶化が早い』と言ってくださったことがあって。言語化するぎりぎりのところで耐えなきゃいけないんだ、と気づいた。今回は、それが少しできた気がします」=2015年5月20日(塩塚夢撮影)
  • 「界」(藤沢周著/文芸春秋、1200円+税、提供写真)
  • 「珠玉」(開高健著/文春文庫、473円、提供写真)

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