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迫る捜査 ブラッター氏窮地 元側近逮捕 FIFA会長選、欧州が欠席へ

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迫る捜査 ブラッター氏窮地 元側近逮捕 FIFA会長選、欧州が欠席へ

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5月27日、米フロリダ州マイアミにある北中米カリブ海サッカー連盟の本部を家宅捜索し、押収した資料を運び出す米連邦捜査局(FBI)の職員ら。捜査はまだ緒に就いたばかりだ=2015年(ロイター)  現職副会長2人を含む7人が逮捕されるなど汚職事件に揺れる国際サッカー連盟(FIFA)は29日、スイスのチューリヒで総会を開き、会長選挙を行う。ゼップ・ブラッター会長(79)=スイス=の5選が確実視されていたが、事件を受けて欧州サッカー連盟(UEFA)が会長選のボイコットを一時ちらつかせ、ブラッター氏に辞任を迫るなど、緊張感が高まっている。一方、訴追対象がさらに広がるのは必至で、米司法当局は氏名不詳の共犯者多数の存在に言及。メディアの関心は、捜査の手がブラッター氏にも及ぶのかどうかに集まっている。

 ブラッター氏は27日、米当局が主導する捜査に全面的に協力する姿勢を打ち出し、「当局の調べはFIFAが既に取り組んできた不正撲滅を加速させる」との声明を発表。倫理委員会は、起訴されたFIFA関係者9人ら計11人に暫定的な活動停止処分を下した。ただ、ブラッター氏の声明はあくまで平静を装ったもので、その第三者ぶりを白々しいと感じている関係者は多い。

 アジア、アフリカ、南米、北中米カリブ海を票田とするブラッター氏との対決姿勢を強めるUEFAは27日に理事会を開き、「FIFAの文化が根底まで腐敗している証拠」と強く批判する声明を発表。会長選での対立候補のヨルダンのアリ王子(39)は「世界中のサッカーファンの自信を取り戻すリーダーシップが必要だ」と体制刷新を訴えている。

 疑惑のデパート

 27日には、かつてブラッター氏とは親しい関係にあり、今回の事件で起訴されたジャック・ワーナー元FIFA副会長(72)=トリニダード・トバゴ=が自国内の警察署に出頭し、逮捕された。起訴内容を否認しているとされるが、ワーナー氏には長く黒いうわさがつきまとい、「疑惑のデパート」とも評されていた人物だ。

 北中米カリブ海連盟会長としてブラッター氏の票集めに協力したワーナー氏は、過去にもW杯入場券の不正販売や国際試合に絡む契約金横領などの疑いで告発を受けていた。その後、ブラッター氏とはたもとを分かち失脚したが、ワーナー氏がFIFAを離れても、北中米カリブ海に巣くう汚職の構造は変わらなかった。ワーナー氏を引き継いだジェフリー・ウェブFIFA副会長(50)=ケイマン諸島=も起訴された14人に含まれている。

 聴取恐れ訪米回避?

 また、米当局の起訴資料から、南アフリカが招致した2010年のワールドカップ(W杯)をめぐり、南ア側からワーナー氏に1000万ドル(約12億円)の賄賂が渡った疑いがあることが分かった。米紙ニューヨーク・タイムズは、南ア招致をめぐっては他に25人の氏名不詳の共犯者がいるとしている。ブラッター氏が捜査対象に入っているかどうかは明らかではないが、ブラッター氏をめぐっては最近、米当局の取り調べを恐れて訪米を避けているとの臆測が流れ、本人がこれを否定したばかりだ。

 米当局とは別に、スイスの捜査当局も18年ロシア大会、22年カタール大会の招致活動について捜査している。

 日本サッカー協会が所属するアジア・サッカー連盟(AFC)は会長選でブラッター氏を支持しているが、事件とも絡み、投票直前になって欧州とブラッター氏との対立が一層鮮明となった。だが、対立だけでは何も前に進まない。今回は米当局が細い接点を突破口に独特の国内法を適用してFIFAの腐敗にメスを入れたが、腐敗の背景には利権性の強い国際スポーツ団体を縛る「国際法」がない事情がある。性善説に基づいていては時代遅れで、金権体質が改まることはない。(SANKEI EXPRESS

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