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予知限界 レベル5は8分後 口永良部島で爆発的噴火 137人全島避難
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高く噴煙を上げる口永良部(くちのえらぶ)島=2015年5月29日午前10時20分ごろ、鹿児島県熊毛郡屋久島町永田から撮影(読者提供) 29日午前9時59分ごろ、鹿児島県の口永良部(くちのえらぶ)島の新岳で爆発的噴火が起きた。火砕流も発生し海岸まで到達した。噴火後、気象庁は噴火警戒レベルを3(入山規制)から最も高い5(避難)に引き上げ、住民ら島内の137人全員が船やヘリコプターで10キロ余り離れた屋久島へ避難した。気象庁は今後も同じ程度の噴火が続く恐れがあるとし厳重な警戒を呼び掛けている。昨年8月に1980年以来となる噴火が起き、レベルを1から3に引き上げて以降、観測を強化し警戒していたが、爆発的噴火を予知することはできず、改めてその困難さを浮き彫りにした。
突然の轟音(ごうおん)とともに立ち上った巨大な噴煙は、またたく間に島の上空を覆い、高さは9000メートル以上に達した。火砕流で山肌は灰色に染まり、噴石も確認された。気象庁によると、最も大きな噴火は5~6分続き、その後も複数回にわたり起きた。
「いきなり『ボン』という音がした。昨年夏よりもすごい。巻き込まれたら命がない」。そう直感した民宿経営の女性(64)は、何も持たずに避難した。島唯一の学校である金岳小・中学校で授業を受けていた15人は教員の車数台に分乗して、火口周辺から約4キロの番屋ケ峰の高台にある避難所に向かった。住民の多くも避難してきた。気道熱傷を負った男性(72)と体調不良を訴えた男性(82)が県のヘリで屋久島の病院に搬送された。
2007年に運用が開始された噴火警戒レベルで5が出されたのは今回が初めて。気象庁は今回の噴火タイプについて、マグマの熱で高温高圧になった地下水が爆発する、昨年9月に御嶽山(おんたけさん、長野、岐阜県)で起きたような「水蒸気噴火」ではなく、マグマが直接関係した噴火の可能性を指摘した。専門家はマグマ自体が噴出する「マグマ噴火」よりもマグマが地下水に接触して爆発的に噴火する「マグマ水蒸気噴火」の可能性が高いとみている。
今回の噴火はまったくの突然ではなかった。昨年8月の34年ぶりの噴火でレベル3に引き上げた後、今年3月には高温の溶岩や火山ガスなどが噴煙や雲に映り明るく見える「火映」を観測。4月に入ってからは二酸化硫黄の放出量が1日当たり900~2600トンに上ったほか、火山性地震も1カ月で50回以上を記録した。今月23日朝には、ごく浅い震源で震度3の地震が発生した。このため、気象庁は4日前の25日に「爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火に移行する可能性がある」との火山解説情報を発表したが、警戒レベル4(避難準備)への引き上げは見送った。
引き上げの基準が「24時間以内に複数回の有感地震」などとなっており、23日は1回だけだったためだ。レベル5へと一気に引き上げたのは噴火から約8分後。あらかじめ住民らを島外に避難させるなどの万全の対応はとれなかった。
気象庁の北川貞之火山課長は「地震活動などが高いところで安定しており、直前に警戒レベルを上げるきっかけとなるデータの変動がなかった」と述べ、レベルの引き上げが後手に回らざるを得ない“予知の限界”を吐露した。(SANKEI EXPRESS)