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政権奪還へ 禁じ手「共和党」 仏サルコジ党首 物議の改名
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自らが党首を務める国民運動連合(UMP)の党大会で、新党名「共和党」のロゴを背に演説するフランスのニコラ・サルコジ前大統領。「政権奪還を実現させる」と豪語した=2015年5月30日、フランス・首都パリ(ロイター) フランスのニコラ・サルコジ前大統領(60)が党首を務める保守系野党、国民運動連合(UMP)は5月30日、パリで党大会を開き、党名を「共和党(レ・レプブリカン)」に変更した。2年後に迫った次期大統領選への出馬を目指すサルコジ氏は、悪化した党のイメージ刷新を図り、党内外の支持拡大につなげたい考えとみられる。しかし、革命で王政を廃止し、現在の第五共和政に至っているフランスでは、共和国を意味するレプブリカンとは国家の象徴的表現。全国民共有の聖なる言葉を政党が私物化するのは“禁じ手”との批判が上がっている。なりふりかまわず政権奪還に懸けるサルコジ氏を待ち受けるのは、いばらの道だ。
党名変更はサルコジ氏が提案し、UMPは約21万人の党員を対象にその是非を問う電子投票を5月28、29日に実施した。投票率は45%で、83%が賛成票を投じたという。
フランスでは国家を指す場合、単に「共和国」と呼ぶことが多い。このため、与党・社会党を中心とする左派陣営は、フランス人全ての共有価値であり、その価値を示す「共和国」の名を一政党が名乗るのは許されないとして先月、党名変更を認めないよう裁判所に仮処分を求めていた。これに対して司法当局は5月26日、仮処分申請を却下した。ただ、世論調査では全国民の約70%、UMP支持者でさえ約40%が共和党への党名変更に「反対」といった結果も出ており、中立系有力紙ルモンドは社説で「共和党を名乗るのは無礼、傲慢、かつ無責任だ」と批判していた。
サルコジ氏は30日の党大会での演説で「(新党名は)共和国の衰退を止めたいと願う全ての人のためのスローガンだ」と力説。さらに「異議を唱える左派は、共和国のために一体何をやったというのか。国家を衰退させ続けているだけだ」と強調した。
2012年の大統領選で現在のフランソワ・オランド大統領(60)に敗れたサルコジ氏は、その後しばらくなりを潜めていたが、オランド大統領の支持率が20%前後と歴史的低迷を続ける中、昨年11月にUMPの党首に復帰。早々に次期大統領選に向けた党内の予備選への出馬を表明しており、持ち前の強気ぶりも復活している。しかし一方で、選挙時の不正資金疑惑などさまざまなスキャンダルも浮上。党名変更には、こうした窮地に伴う閉塞(へいそく)感を打破し、党に勢いを与えようとする魂胆が見え隠れしている。
また、現状では大統領職復帰の道のりは険しい。2年後の大統領選で誰に投票するかという世論調査では、昨年来、極右政党である国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(46)が首位を維持。先月、フランスの世論調査会社、オドクサが行った調査でも、1位ルペン氏30%、2位サルコジ氏25%、3位オランド氏17%、4位フランソワ・バイル氏(中道政党「民主運動」議長)12%-となっている。党内にもアラン・ジュペ元首相(69)、フランソワ・フィヨン元首相(61)など、ライバルが多く、首尾よく共和党の大統領候補になれるかは不透明だ。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相(60)は30日、党大会に臨んだサルコジ氏にビデオメッセージを寄せ、「親愛なる私の友人へ。党勢拡大と今後の成功を祈っています」とサルコジ氏を励ました。果たして「メルコジ」コンビの復活はあるのか。仏政界から目が離せない情勢になってきた。(SANKEI EXPRESS)