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科学
【Message from the Ocean】(8)バハマ 「幼なじみ」イルカと遊ぶ
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イルカとアイコンタクトを取りながら泳ぐという貴重な経験もできる=2013年7月9日、バハマ(越智隆治さん撮影) 1996年から毎年通い続けている海がある。アメリカ合衆国フロリダ半島の東に点在する島国、バハマ。その西端、ビミニ諸島北の海域に、世界中のイルカファンを魅了する、超フレンドリーなイルカたちが生息している。
イルカの種類は「タイセイヨウマダライルカ」。ここでは、もう20年以上も前から、人と野生のイルカたちの海中での交流が行われている。日本でいうなら御蔵島(みくらじま)や小笠原のようなところで、イルカ好きなら知らない人はいないといっても過言ではない。死ぬまでに一度は訪れてみたいドルフィンスイミングフリークの聖地のような海だ。
イルカたちは、水深5~10メートルほどの白い砂地の海底が広がる「バハマバンク」と呼ばれる海域に生息している。私たちは、フロリダ半島東海岸のウエストパームビーチという町の港からクルーズ船に乗って、この海を訪れる。
イルカの群れを見つけると船をゆっくりと近づける。ときには、イルカたちの方から船の船尾にやってきて、「遊ぼうよ!」と言わんばかりにその場所を動かずに、私たちが海にエントリーするのを待っていることもある。
ワクワクしながらエントリーすると、若いイルカたちが、キューキューと音を発し、ドルフィンスイマーたちの周囲をシンクロしながら回転し始める。泳ぎの上手なスイマーは、イルカたちに合わせて、海中で一緒に回転する。皆、無我夢中でイルカたちと泳ぎ続ける。多くの人が、イルカと間近で泳ぎ、目と目で見つめ合うアイコンタクトを経験し、「ずっと見つめ合いながら泳いだ!」と興奮する。
真正面から顔をのぞき込んでくるイルカもいる。
海草のパスキャッチをして遊ぶイルカもいる。
≪通い続けて20年 まるで人生の「相棒」≫
中には、野生のイルカでありながら、体をぴったりと密着させてくる個体もいる。体を優しくなでると、ピクピクっと、ちょっと痙攣(けいれん)したように体を反らせる。他では体験することのできない、野生のイルカたちとの触れ合いによって、スイマーたちの興奮はピークに達する。
研究者の乗船する船や、20年以上前からこの海域でドルフィンクルーズを行っている船では、イルカたちの個体識別も行われていて、もう20年近く通っていると、船上からでも、認識できる、顔なじみのイルカたちもいる。
自分からすると、毎年バハマに住む幼なじみか、親戚(しんせき)たちに会いに来るような感覚だ。毎年、1カ月ほど、船上生活をしながら、この海域でイルカたちと泳ぎ、撮影を行っている。
息子たちをまだ生後間もない頃から、クルーズ船に乗せて、親子でイルカと一緒に泳ぐことは、子供が生まれる前からの私たち夫婦の夢の一つでもあった。
一度でも夢が叶えばと思っていたのだが、毎年とはいかないが、結局何度も息子たちを連れてこの海に戻ってきている。クルーズ船の中にある柱には、訪れた年に測った、息子たちの身長が刻まれている。
船上では、自由気ままに生活する。イルカが姿を見せるまでは、皆思い思いのスタイルで時間を潰し、イルカたちが姿を見せたら泳ぎたい人は泳ぎ、船上から皆がイルカと泳ぐのを見ていたい人は、船首に座り、のんびりとその様子を眺めたり、「あっち、あっち! あっちから来てるよ!」と泳いでる人にイルカがやってくる方向を教えたりしている。
もう20年…。その間に、妻と出会い、バハマの船上で結婚式を挙げ、長男、海友(かいと)が生まれ、次男、颯友(はやと)が生まれた。私の人生は、ある意味、この海とこの海に住むイルカたちと共にあると、今では実感している。この海に住むイルカたちに、いつまで、家族で会いに来ることができるのだろうか。(写真・文:海洋フォトジャーナリスト 越智隆治(おち・たかじ)/SANKEI EXPRESS)