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科学
【エコノナビ】イルカ座礁の謎
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打ち上げられたイルカを救助する住民ら=2015年4月10日午後、茨城県鉾田市(共同) 今年4月10日に茨城県鹿嶋市の海岸に150頭を超えるイルカが座礁しているのが発見された。サーファーやボランティア団体もイルカを海に戻す救援活動に奔走したが、ほとんどが死んでしまった。
解剖学を大学などで教えている知人の教授によれば、座礁して2日も経てしまったイルカは相当衰弱しており、無理に海に戻そうとするとかえって溺れ死ぬ結果になってしまうという。救援活動に一生懸命だった人たちの思いに水を差すようだが、それが現実なのだそうだ。イルカの死骸は各地の大学の医学部などに献体として渡されたそうで、その教授は、死んだイルカの頭部を持ち帰った。
この地では4年前の3月4日にも52頭のイルカの座礁があってその1週間後に東日本大震災が起きた。そのため、また大地震が起きる前兆ではないかと話題になったのは記憶に新しい。
イルカは超音波(エコー)を発しながら周囲の地形を判断して泳いでいるが、地震に伴う磁場の乱れによって、集団座礁したのでは、などという説明もネットなどで飛び交っている。
しかし、イルカやクジラの集団座礁は世界中で度々起きている。その後に地震発生の頻度が高いという因果関係は実証されておらず、地震と無理に結びつけるのは難しい。餌を深追いして浅瀬に乗り上げてしまったという説もある。
その教授によれば、正直なところ、原因はよく分からないらしい。教授らによるイルカなどの個体の座礁に関する研究ではウイルスが原因ではないかとみているそうだ。海洋生物でも環境悪化などのストレスで負荷が強くなると、普段は問題にならないウイルスや細菌によっても病気になる。人間でも抵抗力が弱くなると帯状疱疹(ほうしん)にかかったりするのと同じらしい。
海の中のウイルスの振る舞いを研究し解明することも漁業資源の減少が危惧されている海の生態系を再生させる大きな手がかりになるだろう。地球の環境保全のためにも海洋生物の大量死の原因究明が待たれる。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)