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米スパイ 盗まれた履歴書 情報機関でサイバー被害 中国攻撃か

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米スパイ 盗まれた履歴書 情報機関でサイバー被害 中国攻撃か

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今年4月22日、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催された情報セキュリティー関係の世界有数の国際会議「RSAコンフェランス」のラウンジに設置された「サイバー攻撃の脅威度マップ」。今やサイバー空間の安全確保は、国家安全保障上の最重要課題の一つとなった=2015年(AP)  今月初め、現・元政府職員の個人情報約400万人分が流出していたことが明らかになった米国で、新たに機密度がより高い情報機関の個人情報が大量にサイバー攻撃によって盗まれていたことが分かった。AP通信など複数の米メディアが12日、米政府当局者の話として伝えたもので、攻撃を仕掛けたのは中国だとしている。数百万人分のデータが流出した恐れがあり、米政府内では、国家安全保障上の重大な脅威だとの危機感が強まっている。

 職業から交友歴まで

 米国の中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)、国土安全保障省(DHS)、国防総省の国防情報局(DIA)などは、国内外で勤務する要員らを採用する際、厳しい人物調査を実施している。今回、盗まれていたのは、これら情報機関の職員が採用試験を受ける際に記入・提出した「スタンダードフォーム86」と呼ばれる文書で、各職員の社会保障番号や氏名、学歴、職歴はもとより、犯罪歴、病歴、交友関係など多岐にわたる情報が満載されている。

 具体的には、「過去7年間、各種ローンで債務不履行を起こしたことがあるか」「これまでにアルコール中毒の症状を経験し、治療やコンサルティングを受けたことがあるか」「過去7年間、非合法の薬物や精神安定剤を服用したことがあるか」…などといった質問に答えた情報がスタンダードフォーム86には盛られている。

 米当局の元防諜担当者は、「こうした情報は、スパイ活動にとって極めて有益で、標的にした対象者をゆする際の格好の材料となる。情報機関の要員の活動も困難なものにする。盗み出した側にとっては、まさに情報の黄金鉱脈といえる」と話している。

 1400万人分とは別

 米連邦政府の人事管理局(OPM)は今月4日、現・元政府職員約400万人分の個人情報流出を公表したが、OPMは情報機関の個人情報は管理しておらず、今回判明したサイバー攻撃はこのケースとは別だ。CNNテレビも、政府高官の「OPMシステムへの不正侵入とは今回は異なる」との見解を伝えた。一方で、約400万人分とされていた現・元職員の個人情報流出も、その後の調査で最大1400万人分にまで拡大し、米政府の打撃はさらに甚大となっている。

 社会保障番号などの個人情報は、政府のコンピューター・ネットワークにアクセスする際に要求されるものもあり、機密情報の窃取をさらに容易にする危険性も指摘されている。

 流出量は想像超える

 サイバー空間では米国が圧倒的な優位を得ているわけではないと認識している米政府は、一連のサイバー攻撃が中国からのものだとほぼ断定しているが、中国政府の直接関与については慎重に明言を避けている。ただ、サイバー問題を「米中間の最も深刻な懸案の一つ」(国務省高官)としており、今月下旬に両政府がワシントンで開く「米中戦略・経済対話」でも取り上げる構えだ。

 セキュリティー・クリアランス(国家機密へのアクセス権)を要する米政府関係の専門求人サイト、クリアランス・ジョブズを運営するエバン・レッサー氏は「個人情報の流出量は想像をはるかに超えており、このままでは政府機関への就職を希望する人は、自身の個人情報が筒抜けになることを覚悟しなくてはならない。サイバー・セキュリティーの最も優秀な人材は政府ではなく民間におり、米政府は官民一体で対策を進めなくてはならない」と話している。(SANKEI EXPRESS

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