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世界に衝撃広がった「女王死去」誤報 “うっかり投稿”SNSに潜む危険性

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世界に衝撃広がった「女王死去」誤報 “うっかり投稿”SNSに潜む危険性

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イギリスの総選挙を受け、5月27日に開幕した新議会に臨むエリザベス女王。伝統に従い、キャメロン政権の施政方針の代読し元気な様子を見せたばかりだったが…=2015年5月27日、英国・首都ロンドン(ロイター)  英BBC放送の女性記者が自身のツイッターに、エリザベス英女王(89)が「亡くなった」と投稿し、一部の欧米メディアの後追いで「死亡説」が世界を駆け巡る大騒動が3日起きた。BBCは誤報を謝罪し社内調査に乗り出した。

 BBCではこの日、女王が死去した際の報道のリハーサルが行われており、それを知らなかった記者が本当に死亡したと思い込み投稿したとみられる。

 世界中の報道機関や政府機関、企業、著名人がツイッターなどのソーシャルメディアを情報発信手段として活用するなか、英公共放送で起きた“うっかり投稿事件”に大きな衝撃が広がっている。

 欧米メディア後追い

 「速報。女王エリザベス2世がロンドンのキング・エドワード7世病院に入院した。まもなく声明が発表される」

 「女王は亡くなった」

 3日午前、英女王をめぐる衝撃ニュースがツイッターに相次いで投稿された。英紙ガーディアン(電子版)などによると、投稿者はBBCでパキスタンやインド北部で使われるウルドゥー語のニュースサービス部門に勤務するアーメン・カワジャ記者(31)。

 BBCの公式ツイッターではなく個人のものだったが、女王はこの日、同じ病院で毎年恒例の健康診断を受けていたこともあり、欧米主要メディアが反応。米CNNテレビと独紙ビルドが公式ツイッターに「入院」の投稿を転載して後追いし、死亡説や健康不安説が一気に拡散した。

 女性記者はその後、「女王の死去は誤報でした! 女王はまだ病院で治療中」と投稿し、最終的にはその投稿も含めすべてを削除。「くだらない悪ふざけでした。驚かせたみなさんに謝罪します」と投稿でわびた。

 ただ、英君主として歴代最高齢となった女王の健康不安説が広がることを懸念したバッキンガム宮殿が、「女王は体調不良ではなく元気である」との声明をわざわざ出す事態となった。

 情報共有できず

 BBCは自社の電子版で、王族の死去に関するリハーサルで起きた失態と説明。懲戒規定に基づき彼女を含む関係者への調査を始めたことを明らかにした。

 ガーディアンによると、ジョナサン・ムンロ報道局長が3日にスタッフに送った電子メールには、「テレビで『カテゴリー1』の死去を伝えるリハーサル」と記されていた。

 さらに、他者への口外やソーシャルメディアの使用を禁止することに加え、「目立たないように」とも通達されていた。

 カテゴリー1には女王と夫のエディンバラ公(93)、チャールズ皇太子(66)、ウィリアム王子(32)の4人が指定されており、リハーサルは半年に1回行われているという。

 女性記者はリハーサルに参加しておらず、社内で情報共有ができていなかったことが原因とみられる。BBCの内部関係者はガーディアンに「主要メディアが要人の死去についてリハーサルをするのは周知の事実だが、大事なのはそれを口外しないことだ」と語り、前代未聞の醜態を嘆いた。

 混乱招くリスク

 世界の多くの報道機関が、ツイッターやフェイスブックをニュースを速報する媒体として活用。ローマ法王フランシスコ(78)やバラク・オバマ米大統領(53)らもツイッターを開設し情報を発信している。

 一方で、誤報や偽情報が混乱を招く事例も少なくない。2013年にはAP通信のツイッターが中東のサイバーテロ組織にハッキングされ、「オバマ大統領がテロで負傷」との偽情報が流され株価が急落する事態となった。

 今回の事件は、乗っ取りやなりすましも含め、ソーシャルメディア活用のリスクを改めて突き付けた格好だ。(SANKEI EXPRESS

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