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現代の女性たちへの応援歌に 舞台「メアリー・ステュアート」 神野三鈴さんインタビュー
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女優、神野三鈴(かんの・みすず)さん。夫の小曽根真は本読みも付き合う。「『関西弁に変えないとできない』というので笑っちゃう」=2015年5月20日、東京都新宿区(宮崎瑞穂撮影) 女優の神野三鈴(かんの・みすず、49)が、16世紀に生きた2人の女王を描く「メアリー・ステュアート」でイングランド女王エリザベス1世を演じる。中谷美紀(39)演じるスコットランド女王メアリーとの2人芝居。王位と恋をめぐり対照的に生きた2人には、さまざまな女性像が投影されている。夫のジャズピアニスト、小曽根真(54)を支え、母を介護した自身の人生とも重ね、現代の女性たちへの「応援歌にしたい」と話す。
「バージン・クイーン(処女の女王)」として恋を捨て、王位を全うしたエリザベス1世と、恋に生きてエリザベスに処刑されるメアリーとの対比は過去、さまざまな作品の題材とされてきた。
今回の原作はイタリア人女性作家、ダーチャ・マライーニ、演出は英国の若手、マックス・ウェブスター、衣装はワダエミ。神野はメアリーの乳母を、中谷はエリザベスの侍女も並行して演じ分け、その掛け合いの妙も見どころとなる。
「4人の姿には、一人の女性に内包されている『いろんな話』が見え、共感を持ってもらえるはず」と神野。エリザベスとメアリーの人生には、現代の女性にも何かを思い起こさせる。
「エリザベスは絶対的な存在になるために『処女性』を利用した。当時の男性たちがあがめた唯一の女性が聖母マリアだからで、その『セルフプロデュース』の力はすごい。男性の部下を抑えるのは相当なストレスで、女性政治家が気の毒になる。一方、メアリーは、どんどん自分の中に逃げ込んでしまった」
春にはロンドンとスコットランドを視察。「女王目線で見ると全く違う」風景から迫ってきたのは「孤独感」だった。「親族で地位を争い、民に愛されないと存在できない不確かさに、エリザベスの心が休まる日は少なかったと思う」
昔も今も、誰のせいにもしないで自分の人生を生きるのは、女性は男性より難しい。「2人のように『仕事に生きるから子供はいらない』『男性に自分の人生を任せる』と決断するとして、本当に後悔はないか。自分の選択に覚悟を決め、誇りを持つことで、男性や女性の枠を超えた尊厳を手に入れられるはず」
今回の舞台を、女性たちへの「応援歌」にもしたいと言う。実感のこもった言葉の背景には、小曽根と歩んできた人生がある。なかなか芽が出なかった夫を励まし続け、「一流になってほしい」と一緒に米ニューヨークへ渡る。並行して実母の介護が重なり、女優業をセーブして日米を往復する時期が続いた。
母を見送り夫が世界的なピアニストとなったいま、女優として「第二のスタート」を切った。「そう宣言したら大きな仕事をいただけるようになってきた。エネルギーを自分で発散することで風向きは変えられる。同世代の女性たちにはこれから介護や更年期障害など、いろんなことが起きるはず。私の存在が応援につながれば、すごくうれしい」
小曽根は「今度は僕が応援する番」と、神野の舞台には必ず足を運ぶ。「本当に感動すると『ブラボー』って立ち上がって拍手してくれます。ちょっと恥ずかしいけど」とはにかんだ。(文:藤沢志穂子/撮影:宮崎瑞穂/SANKEI EXPRESS)
【ガイド】
6月13日~7月5日、東京・パルコ劇場。(問い合わせ)パルコ (電)03・3477・5858。地方公演あり。