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科学
浅間山、小規模噴火 不安募る列島、専門家「連動ない」
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ごく小規模な噴火が起きた浅間山の火口付近=2015年6月16日午前11時44分、群馬、長野県境(共同通信社ヘリから撮影) 気象庁は16日、浅間山(群馬、長野県)で16日朝にごく小規模な噴火が起きたと発表した。2009年5月27日以来、約6年ぶり。気象庁は「これ以上、活発化する兆候はみられない」として、噴火警戒レベルは現状の2(火口周辺規制)を維持。火口から約2キロで大きな噴石への警戒を求めている。
気象庁によると、16日午前8時10分ごろから、マグマの動きを示すとされる火山性微動が連続的に発生。午前9時半ごろ、観光施設の職員が、火口から北側約4キロの鬼押出しで微量の降灰に気づいた。火山性地震は午後3時までに64回に上った。火口上空では、白色の噴煙と青白色のガスの噴出を観測した。
山の膨張を捉える傾斜計は、火山活動に関連するとみられるわずかな変化を測定。爆発による空気の振動を測る空振計に変化はなかった。
気象庁は16日、機動観測班を現地に派遣し、火山灰を採取した。今後詳しく分析し、噴火のメカニズム解明を目指す。
浅間山では08年から09年に噴火が相次ぎ、気象庁は警戒レベルを段階的に3(入山規制)まで上げた。その後、活動は低下し、09年4月にレベル2、10年4月には1に引き下げていた。
しかし、今年4月下旬ごろから、山頂直下のごく浅い場所で火山性地震の多い状態が続き、6月11日には火山ガスである二酸化硫黄の放出量が急増。気象庁は11日、噴火警戒レベルを1から2に引き上げ、火口から2キロの登山道を一部立ち入り規制していた。
安倍晋三首相は16日、浅間山の噴火について「安全対策の強化、情報収集を行っている。対応に万全を期していきたい」と官邸で記者団に述べた。
≪不安募る列島、専門家「連動ない」≫
気象庁が警戒を強めていた浅間山(群馬、長野県)で16日、小規模な噴火が発生した。各地で噴火などが相次ぐ状況に、日本列島の火山活動が活発化しているのではないかと不安が広がる一方、専門家は「火山の活動は数百年単位で見ないといけない。連動しているとは考えにくい」と冷静な対応を求めている。
過去1年の火山活動を振り返ると、昨年9月に御嶽山(長野、岐阜県)が噴火、57人が死亡し、6人が行方不明に。口永良部(くちのえらぶ)島(鹿児島県)では昨年8月に続き今年5月に噴火が起き、住民全員が島外へ避難。帰島時期については、火山噴火予知連絡会が「最大で年単位になる」と長期化を指摘する。
さらに、小笠原諸島の西之島(東京都)は溶岩流出で陸地が拡大。草津白根山(群馬、長野県)や吾妻山(山形、福島県)、霧島連山(鹿児島、宮崎県)の新燃岳などは小規模噴火の可能性がある。山体膨張が続く桜島(鹿児島県)も多量の火山灰が降る噴火の恐れがあり、口永良部島がある屋久島町の職員は「あちこちの火山が動きだしているようで不気味。早く落ち着いてほしい」。
不安を高めている要因には、経済への深刻な影響もある。東日本大震災後に観光客が減った蔵王山(宮城、山形県)では今年4月、追い打ちをかけるように噴火警報(火口周辺危険)が発表された。16日に解除となったが、この間に利用客が減少した山形市の老舗ホテルは破産するなどし、市関係者は「一度離れた客を取り戻すのは簡単ではない」と話す。
風評被害の懸念は、日本有数の温泉街を抱える箱根山(神奈川県)でも同じ。蒸気の強い噴出や火山性地震が続いて5月に噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)へ引き上げられると、ある施設はこの月の客が昨年より約2割も減り、地元の観光協会は「好転する兆しがない。書き入れ時の夏休みが迫って心配だが、今はじっと耐えるしかない」と語った。
火山活動が活発化しているかどうかには、専門家の間で否定的な意見が多く、東京大地震研究所の中田節也教授は「近年で特に活発になったというわけではない。噴火はいずれも小規模で、火山にとっては呼吸しているようなもの」と述べる。
産業技術総合研究所の下司信夫・大規模噴火研究グループ長も「噴火が増えているように感じるのは、1991年に起きた長崎県の雲仙・普賢岳の噴火以降、火山活動が静かな時期が続いたからではないか」と説明。浅間山をめぐっては、過去に数年間隔で噴火を繰り返していることを指摘した上で「御嶽山(おんたけさん)や口永良部島の火山活動と連動しているとは考えにくい」との見解を示し、過度な反応を戒める。
御嶽山の噴火後、気象庁は火山の観測態勢を強化するため、全国110の活火山のうち常時監視対象の47火山を中心に、火口の状況を把握するカメラや火山ガスの観測機器などの設置を進めている。専門的な人材の育成や噴火の兆候をつかむ研究にも取り組む。
8月からは、登山者らに情報をいち早く伝えて、被害に遭うのを防ぐ「噴火速報」も運用するが、科学的データの蓄積や手法の開発には長い時間と経費が必要になる。気象庁幹部は「火山活動は影響する期間が長く、生活に直結するので、社会の注目が集まっているのは事実。まだ手探りだが、やれることから始めている」と話している。(SANKEI EXPRESS)