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社会
【口永良部島噴火】犠牲者ゼロ 「火山島」の教訓生きる
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5月29日午後、口永良部島(くちのえらぶじま)から屋久島へ避難し、宮之浦港でフェリーから降りる住民ら=2015年、鹿児島県熊毛郡屋久島町(川口良介撮影) 口永良部島(くちのえらぶじま)の新岳の爆発的噴火では、犠牲者が一人も出なかった。島は薩南諸島最大の「火山島」で、昭和以降だけでも噴火を10回近く経験し、積み上げた教訓がある。昨年8月、34年ぶりに噴火した際には、防災マップを見直して避難場所を変更するなど、対策を練り上げたことも安全な避難に寄与した。
鹿児島県屋久島町によると、島には警察官や消防士がおらず、医師も今年4月にようやく1人が常駐を始めた。島民を守っているのは消防団で、今回の噴火でも島民の安全確認に尽力したという。
屋久島町の森山文隆総務課長は「これまでの噴火の経験が生きている。今回の避難準備も、受け入れ体制も整っていた」と話す。
島に唯一ある学校、金岳(かながたけ)小・中学校では児童・生徒16人、教諭11人がいるが、昨年の噴火以降、教諭の車を校舎脇に止めてすぐに避難できるようにした。島全体の防災マップもあったが、昨年の噴火を受けて見直し、地区ごとの避難ルートを詳細に作成。避難場所も新岳から遠く離れた高台にある既存の建物に設定し直した。
消防庁によると、昨年8月3日正午ごろに新岳付近で噴火が発生し、灰色の噴煙が上空800メートルまで上がった。その際の負傷者はゼロ。気象庁は当時、噴火警戒レベルを最も低い1(平常)から3(入山規制)に引き上げた。
この噴火の4日後には、新岳火口付近から南西の海岸までの範囲で火砕流の警戒が必要と呼びかけた。町によると、島内全域に避難準備情報が発令されたことを受けて島民の約半数が一時、島外へ自主避難したことも、今回の噴火での安全な避難につながったという。
ただ昨年8月の噴火以降、多くの専門家が対応強化の必要性を感じていた。口永良部島の元ガイドで樹木医の荒田洋一さん(59)は先月、口永良部島を訪問、「硫化水素の臭いが漂い、いつ大きな噴火があってもおかしくないと感じた。もっと早い時期に全島避難すべきで、今回、大きな人的被害がなかったのは偶然にしかすぎない」と警鐘を鳴らした。
≪マグマ水蒸気爆発か 「数年間繰り返す恐れ」≫
鹿児島県の口永良部島で29日に起きた噴火について、専門家は高温のマグマが地下水に接触して爆発する「マグマ水蒸気爆発」の可能性が高いとみている。昨年の御嶽山(おんたけさん、長野、岐阜県)の噴火とはメカニズムが異なり、規模が比較的大きい爆発的噴火となった。
東大地震研究所の中田節也教授(火山学)によると、口永良部島の直下には推定で深さ3~5キロの場所にマグマだまりがある。ここから上昇したマグマが、深さ200メートル付近で地下水と接触し、大量の水蒸気が発生して爆発的な噴火が起きたとみられる。
この仕組みは過去に大規模な噴火が起きた浅間山(群馬、長野県)などと同じという。一方、御嶽山や箱根山(神奈川、静岡県)で懸念される噴火は、地下水がマグマで間接的に加熱される水蒸気爆発だ。
今回の噴火形態は「ブルカノ式」と呼ばれる。溶岩でふさがっていた火口がガスの圧力で開き、ガスが一気に噴き出して激しい爆発音や黒い噴煙を伴うもので、国内の火山でよくあるタイプだ。噴火の規模は前回の昨年8月より大きい。
東日本大震災の発生以降、各地で火山活動が活発化している。日本の火山は、海洋プレート(岩板)が陸側に沈み込む海溝に平行して帯状に連なっている。帯状の地域の地下でマグマが発生しているためだ。口永良部島は九州以西に延びる南西諸島海溝沿いに位置し、桜島(鹿児島県)などと同じ火山帯を形成している。
マグマは成分によって噴火の仕方が異なり、一般に粘り気が強いと爆発的になりやすい。口永良部島のマグマは桜島と同じ安山岩タイプで、粘り気の少ない伊豆大島(東京都)などの玄武岩タイプと、粘り気が強い雲仙普賢岳(長崎県)などの中間の性質を持つ。
中田教授は今後の見通しについて「最長で数年間にわたり、断続的に噴火を繰り返す可能性がある。最初の噴火が最大規模とは限らない。火砕流が今回と違う方向に流れる恐れもある」と話している。(SANKEI EXPRESS)