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トヨタ女性役員逮捕で社長会見 「謝るのも責任」 トップが危機対応

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トヨタ女性役員逮捕で社長会見 「謝るのも責任」 トップが危機対応

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記者会見の冒頭、頭を下げて謝罪するトヨタ自動車の豊田章男(とよだ・あきお)社長=2015年6月19日午後、東京都文京区の東京本社(古厩正樹撮影)  トヨタ自動車の豊田章男(とよだ・あきお)社長(59)は19日、東京都文京区の東京本社で記者会見を開き、トヨタのジュリー・ハンプ常務役員(55)が麻薬取締法違反容疑で逮捕されたことについて「世間をお騒がせすることになり誠に申し訳ない」と謝罪した。ハンプ容疑者は容疑を否認しており、豊田氏は「仲間を信じ、捜査を通じて法を犯す意図がなかったことが明らかにされると信じている」と述べた。

 ハンプ容疑者は女性や外国人の登用を進めるトヨタの“目玉人事”として4月に初の女性役員に抜擢(ばってき)された。豊田氏は登用の理由を「人柄と現場を任せられること」と説明。米国籍のハンプ容疑者が役員として日本に常駐することが「真のグローバル企業の第一歩。ハンプ氏も溶け込む努力をしていた」と強調。

 一方で「(トヨタとして)サポートする準備が多少不足していた」とも述べた。

 逮捕後のハンプ容疑者の様子や今後の処遇については「捜査にかかわる」として回答を避けた。逮捕による販売などへの影響は出ていないという。

 ハンプ容疑者は、麻薬成分を含む錠剤を密輸したとして18日に警視庁に逮捕された。「麻薬を輸入したとは思っていない」と容疑を否認している。

 ≪「謝るのも責任」 トップが危機対応≫

 トヨタ自動車の豊田社長自らが記者会見を開いて謝罪した背景には、ブランドイメージに打撃を与えかねないという危機感があった。今後も「真のグローバル化」を継続する考えを強調した豊田社長だが、改めてリスク管理のあり方が問われている。

 「私自身が自分の言葉で説明することが大切だと考え、こうした場を急遽(きゅうきょ)設けさせてもらった」

 会見の冒頭、豊田社長は理解を求めた。

 ハンプ容疑者の逮捕については18日午後1時に警察の連絡を受けた役員から報告されたという。豊田社長は「役員も従業員も私の子供のような存在。謝るのも親の責任だ」と述べた。

 迅速な対応の背景には、2009~10年の大量リコール(回収・無償修理)問題の反省もある。説明不足が重なったことで、米国では“トヨタたたき”に発展した。その後、豊田社長が米議会公聴会で自ら先頭に立って安全や品質の確保に向けて取り組む姿勢を示すと、潮目が変わった。

 グループ販売が1000万台を超え、今や世界最大の自動車メーカーになったトヨタにとって、人材の多様化を避けることはできない。豊田社長も会見で「性別、国籍を問わず、お客さまの笑顔を頂く、もっといい車づくりを推進する体制の変更はいっさい考えていない」と強調した。

 ただ、今回の事件がグローバル企業になる上でのリスクを再認識させたのも事実だ。

 海外企業では「役員を採用する場合に、人となりを前職の関係者などに聞き取る文化が浸透している」(人材紹介会社)が、トヨタ幹部はハンプ容疑者を採用する際の調査については明言しなかった。

 一方、19日の東京株式市場でトヨタの株価は堅調に推移し、終値は前日比50円高の8234円だった。現時点で、市場は事件を冷静に受け止めた格好だ。販売現場への影響についても「そういう情報はない」(豊田社長)という。

 ≪麻薬、「ネックレス」で輸入 隠蔽工作か≫

 麻薬オキシコドンの錠剤を密輸したとして、麻薬取締法違反容疑でトヨタ自動車の常務役員、ジュリー・ハンプ容疑者が逮捕された事件で、小包は「ネックレス」の品目で輸入されていたことが19日、警視庁への取材で分かった。錠剤は小包の底や紙袋に分けて入っており、警視庁は輸入を禁じられていることを知りながら隠蔽を図ったとみて捜査している。

 警視庁によると、小包の中には縦7センチ、横10センチ、高さ3センチ程度の紙製とみられる小箱が入っていた。小箱の中には玩具とみられるネックレスやペンダントが入っており、錠剤は箱の底や一緒に入っていた紙袋、ペンダントケースの底の3カ所に隠されていた。

 オキシコドンは鎮痛剤として処方されることもあるが、警視庁は現段階でハンプ容疑者が錠剤が必要な状態ではなかったとみている。

 日本ではオキシコドンは医療用として承認されており、主にがん治療の痛み緩和に使われている。海外から日本に持ち込むには、医師の診断書などを添えて事前に厚労相の許可を得る必要があり、郵送などでの輸入は認められていない。ある麻酔科医は「米国ではがん以外にもかなり広く使われており、適応しない人が使用して、問題化している。日本との認識の差は大きい」と話している。(SANKEI EXPRESS

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