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外相会談 世界遺産登録「ともに協力」 糸口探る日韓、「慰安婦」深入りせず

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外相会談 世界遺産登録「ともに協力」 糸口探る日韓、「慰安婦」深入りせず

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会談を前に握手する岸田文雄外相(右)と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相=2015年6月21日午後、東京都港区の外務省飯倉公館(代表撮影)  岸田文雄外相は21日、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と東京都内の外務省飯倉公館で会談した。韓国側は、日本が進める「明治日本の産業革命遺産」(計23施設)の世界文化遺産登録について協力する方針を初めて示した。安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の間で実現していない日韓首脳会談に向け努力することを確認した。

 韓国の外相の来日は約4年ぶりで朴政権下では初めて。

 世界文化遺産の登録をめぐっては、韓国側が「戦時中に朝鮮人労働者が強制徴用された施設が含まれている」と反対していた。ただ、韓国政府も、世界文化遺産の登録を目指している案件があり、岸田氏は会談後、記者団に対し、「ともに協力して、両案件が登録できるよう努力することで一致した」と述べた。

 懸案の慰安婦問題に関しては、岸田氏は1965年の日韓基本条約で「完全かつ最終的に解決」したとの立場を主張。尹氏は日本に「法的責任」を求める姿勢を崩さず、双方が原則論を繰り返したもようだ。

 韓国側は慰安婦問題で日本が譲歩しなければ日韓首脳会談に応じない構えをみせているが、双方は今秋にもソウルでの開催が想定される日中韓首脳会談の際に、日韓首脳会談を行う道筋を模索したとみられる。

 両外相は、相互訪問の実施で合意した。韓国の尹外相は岸田外相に年内の訪韓を要請し、岸田氏は適切な時期の訪韓を調整するとした。

 東京電力福島第1原発事故を理由に韓国が日本からの水産物輸入の規制を強化している問題でも意見交換。南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で中国が岩礁埋め立てを強行し、地域情勢が不安定化していることへの対処についても議論したとみられる。

 首相、50年式典出席へ

 一方、安倍首相は在日韓国大使館が22日に都内のホテルで開催する国交正常化50年の記念式典に出席する意向を固めた。

 また、韓国の聯合ニュースによると、韓国大統領府は21日、朴大統領がソウルで22日に行われる在韓日本大使館主催の記念レセプションに出席する予定であると発表した。

 ≪糸口探る日韓、「慰安婦」深入りせず≫

 約4年ぶりに韓国外相を日本に迎えた21日の日韓外相会談は、22日の国交正常化50周年の節目にあたり、冷え込む両国関係をリセットする出発点に位置づけられた。韓国側が拘泥するあまり関係改善への最大の阻害要因となっている慰安婦問題については、双方が従来の主張を述べるにとどまり“深入り”を回避したとみられる。両外相は安全保障や経済での協力確認など「よき隣人同士」への回帰の演出に腐心したようだ。

 日韓外相会談について日本の外務省幹部は20日夜、「慰安婦問題は大きな争点にならない」と断言した。

 外務省幹部によると日韓両政府は、双方の「溝」が一向に埋まらない慰安婦問題は主要議題とせず、両国が関係改善をアピールできる案件を模索。中国・北朝鮮の軍事的脅威にさらされる周辺地域の安全保障問題や、「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録問題などに力点を置くことで調整を進めてきた。

 両国は5月23日、財務対話を約2年半ぶりに再開。30日にはシンガポールで約4年ぶりとなる防衛相会談を行うなど閣僚級対話を加速させた。表層的には朴槿恵政権下での初の日韓首脳会談実現に向けた環境は整いつつあるように映る。

 だが内実は、韓国側が慰安婦問題を弥縫的(びほうてき)に“一時休戦”させているにすぎないようだ。日本外務省幹部も「基本的な考え方を変えて議論を進めることはない」と述べており、日本に「法的責任」を迫る韓国側の要求をのむことはない。

 韓国はまた、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後70年談話に「謝罪」の文言が入るか神経をとがらせている。朴政権が「反日」「歴史」の両カードを懐に温存し続ける以上、日韓関係が本格的に雪解けへと進む可能性は低い。(高木桂一、坂本一之/SANKEI EXPRESS

 ≪朴政権、米に外交努力をアピール≫

 韓国の朴槿恵政権が尹炳世外相の訪日に踏み切った背景には、「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産への登録をめぐる可否決定が7月上旬に迫る中、日本側の譲歩を引き出すためには「外相の訪日カード」を切るしかないという事情があった。韓国側にはまず、日韓の関係改善を求める米国に対し、努力姿勢を強くアピールしなければならない事情がある。朴大統領は、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスへの国内対応を優先させて、今月中旬の米国訪問を土壇場で延期した。「外交的非礼」を補うためにも日韓関係改善への積極姿勢を強調する必要に迫られている。

 韓国メディアは最近、安倍晋三首相の訪米成功などを受け、韓国外交を厳しく批判。韓国の孤立を避けるためにも日韓首脳会談の早期実施を求めている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS

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