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政治
「利益を共有」「重荷下ろす協力」 日韓で記念式典、首相・朴大統領が祝辞
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東京都内で開かれた日韓国交正常化50年の韓国側記念行事であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相(右)と、韓国・首都ソウル市内の日本側記念行事で演説する韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領=2015年6月22日(共同) 日韓両国は22日、1965(昭和40)年に基本条約に調印し国交が正常化してから50年の節目を迎えた。安倍晋三首相(60)は22日夕、在日韓国大使館が東京都内のホテルで催した記念式典に出席し祝意を表明、冷え込んでいる両国関係改善に取り組む姿勢と決意をアピールした。一方、ソウルでは、在韓国日本大使館主催の式典が開かれ、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(63)が出席し祝辞を述べた。
安倍首相は祝辞で「韓国は最も重要な隣国であり、日韓両国はお互い信頼し合いながら関係を発展させていかねばならない」と強調。「われわれは多くの戦略的利益を共有している。日韓米の協力はアジア太平洋地域にとってかけがえのないものだ」と述べ、日米韓の緊密な連携の必要性も訴えた。その上で「これまでの50年の友好と発展の歴史を振り返り、次の50年を展望し手を携えて新しい時代を築き上げていこう。朴槿恵大統領と力を合わせ、努力していきたい」と語った。
これに先立ち首相は22日午前、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相(61)の表敬訪問を官邸で受けた。首相は「朴大統領と次の半世紀に向け、さらに関係を改善していきたい」と述べ、朴氏との初の首脳会談の早期実現に意欲を示した。尹氏は「今年を新たな50年の元年にして日韓関係の協力を強化したい」との朴氏のメッセージを伝達した。
尹氏は21日に韓国外相として約4年ぶりに来日し、岸田文雄外相(57)と会談。「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録で両国が協力することで一致し、慰安婦問題では引き続き局長級協議などを通じ議論を続けることを確認した。
一方、ソウル市内のホテルで開かれた式典に出席した朴大統領は「韓日両国に懸案はあるが、協力が必要な分野では協力していかねばならない」と述べた上で、「両国には歴史認識という重荷があるが、和解と協力で下ろしていかねばならない。今年を新たな未来を切り開いていく元年にするべきだ」と呼びかけた。
式典では、日韓議員連盟会長を務める額賀福志郎(ぬかが・ふくしろう)元財務相(71)が安倍首相の祝賀メッセージを代読した。
式典会場の前では、歴史認識で日本に謝罪を要求する市民団体が抗議集会を開いた。ソウルの日本大使館前でも、日本の朝鮮半島統治時代に徴用工や軍人として動員された人々や遺族ら数百人が抗議を行った。
≪中央日報「歴史的出発点に」≫
日韓の国交正常化から50年となる22日、韓国メディアは両国首脳が各国の記念式典にそれぞれ出席することになったことを歓迎する論調が目立った。保守系紙の中央日報は社説で「韓日関係の水の流れを変える歴史的出発点にならなければならない」と期待を込めた。
50年前の韓国は、日本との国交正常化に反対するデモで混乱を極めていた。当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(1917~79年)の命を受けて国交交渉に当たった金鍾泌(キム・ジョンピル)元首相(89)は6月22日付の中央日報で、「日本が憎くても韓国が生きる道を切り開かなければならないと考えていた」と振り返った。
日韓関係はこの半世紀で大きく発展した。朝鮮日報によると、両国の貿易総額は1965年の約2億2000万ドルから2014年には約860億ドルと390倍に、年間往来者数は1万人から500万人へ500倍に増えている。
ただし、韓国貿易協会などによると、昨年は日本からの輸入額が全体の1割にとどまるなど、韓国の貿易で日本の占める割合は国交正常化以降で最低を記録した。日本からの輸入は国交正常化直後には全体の約4割を占めていたという。
代わりに台頭したのが、今や韓国にとって最大の貿易相手国となった中国だ。昨年、韓国を訪れた観光客数は、日本人が前年比17%減の約228万人だったのに対し、中国人は前年比41%増の約612万人で全体の43%を占めた。この半世紀で韓国における日本と中国の存在感は一転した。
ただ、韓国で中国の影響力が増大することへの警戒感も少なくない。保守系の韓国メディアを中心に、早期の日韓首脳会談実現を求める声が強まっているのもそうした背景がある。
金鍾泌氏は中央日報紙上で、朴槿恵大統領と安倍晋三首相に対し「感情外交をやめるべきだ」と国益重視の実利外交を説いている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)