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社会
【Q&A】新幹線の安全対策 荷物検査は困難 巡回強化で対応
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車内で火災が発生し、小田原駅手前で停車する東海道新幹線「のぞみ225号」=2015年6月30日、神奈川県小田原市(川口良介撮影) 東海道新幹線の車内で放火事件が起き、新幹線の安全対策に注目が集まっています。
Q 事件では容疑者の男がガソリンとみられる液体を持ち込みましたが、持ち込みルールはどうなっていますか
A 可燃性の液体を持ち込むことは鉄道営業法などで原則禁止されていますが、JR各社の規定では、ガソリンや灯油は容器も含め3キロまで手回り品として持ち込めることになっています。国土交通省は事件を受け、規定の見直しを検討するよう各社に求めました。
Q 航空機に搭乗する際には荷物検査があります。新幹線でも検査するようになりますか
A 国交省は「過去に議論したことはある」とした上で(1)利用者が多く、素早く乗り込める利便性へのニーズが高い(2)プライバシー上の問題がある(3)駅構内のスペースが狭い-といった理由から難しいとしています。
Q 悪意があれば何でも持ち込めるのでは
A 駅員や車掌、巡回する警察官などが不審な人物に目を光らせていますが、混雑する中で危険物を隠して持ち込まれる恐れもあり、JR各社は監視カメラの増設や巡回の強化で対応しようとしてきました。
Q 車内で火災が起きた場合の対策は
A 新幹線は車外に脱出しにくいため、国交省は地下鉄などとともに最も厳しい耐火基準を定めています。内装や座席に難燃性の素材を使っているほか、隣の車両への延焼を防ぐため、接続部の扉は開いたままにならないようになっています。また、1両に2本以上の消火器を備え、デッキのドア上部には監視カメラもあります。
Q 事件では、煙を吸って被害を受けた乗客が多かったようですが
A 気密性を重視する新幹線車両には、換気装置はあるものの本格的な排煙設備はなく、車内に煙が充満しやすい傾向があります。スプリンクラーなど水による消火設備も、感電する恐れがあり、大量の水が必要で車両が重くなるため、設置されていません。
Q 来年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年の東京五輪・パラリンピックを控えて、テロ対策が急務と言われています
A 国交省やJR各社は警備のあり方や車両設備の改善について検討を始めました。安全と利便性の兼ね合いをどう図るかが課題となりそうです。
≪可燃性液体の持ち込み 規定見直しへ≫
東海道新幹線での放火事件を受け、国土交通省はJR旅客5社に対し、巡回の強化などによる警備の徹底や、可燃性液体の持ち込み規定の見直しを検討するよう求めた。
太田昭宏国交相は1日に開かれた緊急会議で、「火災やテロを視野に入れた対策をしっかりと詰める必要がある」と述べた。一方で「安全の確保が何よりも大事なことは言うまでもないが、利便性の確保も大事だ」と指摘した。5社は新幹線を運行するJR東日本、東海、西日本、九州と、来春から運行予定のJR北海道。
国交省によると、警備徹底の要請に対し、各社は「車両内や主要駅での巡回を増やしたい」と応じた。ただ、荷物検査の必要性に関しては議題とならず、国交省の担当者は会議後に「今後の検討課題だ」とした。一方、国交省の規定見直しの検討要請に対し、各社から異論はなかったという。
会議ではほかに、排煙設備や避難経路など車両側の改善点の有無や、2020年東京五輪に向けた警備対策などが議題となった。警察庁の担当者も出席した。(SANKEI EXPRESS)