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EU、支援交渉開始を決定 ギリシャは反緊縮派排除
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首都アテネでの議会審議に臨むギリシャのアレクシス・チプラス首相=2015年7月16日、ギリシャ(ロイター=共同) 欧州連合(EU)ユーロ圏の財務相は17日、電話会合を開き、財政危機に陥ったギリシャ向け金融支援再開の交渉開始を正式に決め、交渉に当たる権限を欧州委員会に与えた。近く交渉が始まる。EUはこの日、ギリシャへの71億6000万ユーロ(約9600億円)のつなぎ融資も決定。ギリシャの財政問題解決に向けた態勢が整った。
一方、ギリシャのアレクシス・チプラス首相(40)は17日、内閣改造を実施。財政再建策に反対するパナギオティス・ラファザニス生産再建相(63)らを更迭するなど、反緊縮派を排除し、EU側の求める改革を実行していく姿勢を鮮明にした。政権基盤の安定を図り、チプラス氏が党首を務める急進左派連合(SYRIZA)の再結束も目指す。
EUのつなぎ融資は、金融支援(最大860億ユーロ)の正式決定までの当面の間、資金繰りを確保するための措置。財源には、財政難のEU加盟国を対象に融資する基金「欧州金融安定メカニズム(EFSM)」を活用する。ギリシャは国際通貨基金(IMF)への延滞債務や、20日が期限の欧州中央銀行(ECB)への国債償還などに充てる。
EUの交渉開始決定に先立ち、ギリシャに緊縮策を迫ったドイツでは17日、連邦議会が交渉開始を賛成多数で承認した。開始にはユーロ圏各国の議会承認が必要。
ギリシャ内閣改造では、ラファザニス氏の後任にパノス・スクルレティス労相(53)が就任。新たな労相には行政改革副大臣を務めていたジョルジオス・カトルガロス氏(52)が就く。脱税などの取り締まり強化のため、汚職対策特別委員会も設置した。
地元メディアは「チプラス氏は再建策の遂行が先決問題と考え、大幅な改造は避けた」と報じている。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪強硬派ドイツ 決裂寸前ねじ伏せる≫
財政破綻の瀬戸際にあったギリシャに金融支援再開の道を開いたEUのユーロ圏首脳会議。12日から13日にかけ17時間に及んだ厳しい協議では、ギリシャのユーロ圏離脱の選択肢も提示され、決裂寸前に。最後は強硬派ドイツが穏健派フランスを頼るギリシャをねじ伏せ、決着がついた。内幕を関係者の話や欧州メディアの報道を基に振り返る。
「何が何でも合意が必要なわけではない」
首脳会議が行われたブリュッセルに到着したドイツのアンゲラ・メルケル首相(61)が記者団に述べた言葉は困難な協議の前触れだった。
ギリシャに対し一貫して厳格な姿勢を示してきたドイツは首脳会議に先立つユーロ圏財務相会合で、ギリシャのユーロ圏一時離脱の選択肢を声明案に記載するよう主張。この会合は合意に至らず、争いのある部分をかっこでくくって声明案に盛り込み、首脳会議に引き継いだ。
「ギリシャがユーロ圏に残れるよう合意に向けて何でもする」。フランスのフランソワ・オランド大統領(60)は、メルケル氏と対照的な言葉を述べて会場に。独仏両国の間の溝が明確に表れていた。
会議は12日午後4時(日本時間午後11時)すぎに開始。議長のドナルド・トゥスクEU大統領(58)は財務相会合の結果報告を踏まえ、首脳に意見表明を促した。
ドイツを筆頭にフィンランド、オランダ、バルト諸国、スロバキアなどがギリシャに対し厳しい立場を表明。合意に向け明確に妥協の用意がある姿勢を示しギリシャの「味方」となったのは、フランス、イタリア、キプロスの3カ国だけだった。
トゥスク氏が状況の打開に用いたのは、独仏両国とギリシャの各首脳との4者会談。19カ国での協議を3度中断し、別室で調整を図った。
ギリシャのチプラス首相はまず4者会談で「15日までに改革案を法制化する。代わりに銀行が開けられるよう協力してほしい」と提案。財政再建策の一部法制化を支援交渉に先行させることに大きな対立はなかった。
■より厳しい条件のませる
最大の障害となったのは、ギリシャに500億ユーロ(約6兆7000億円)相当の国有資産を独立基金に譲渡させるとのドイツの要求だった。
メルケル氏は基金をルクセンブルクに設置し、資産を売却し債務返済に充てるよう主張。一方、チプラス氏は国外の設置は認められないとし、譲渡する資産の規模や用途にも異論を唱え、協議は行き詰まった。
13日午前7時ごろ、合意は不可能とみた2人が4者会談の場から去ろうと立ち上がる。決裂はギリシャのユーロ圏離脱を意味した。「申し訳ないが、部屋から出ることは認められない」。トゥスク氏が強く引き留めた。結局、オランド氏の仲介などで、基金はギリシャ国内に設置し、売却資金の一部は投資に充てることなどで折り合った。
会議は午前9時ごろ閉幕。声明からユーロ圏離脱に関する文言は消え、会場を離れる際、オランド氏はチプラス氏と抱き合った。しかし国民投票で緊縮策を拒否したはずのギリシャが、より厳しい条件をのまされたのは明らかだった。
ジャン=クロード・ユンケル欧州委員長(60)は会議後の記者会見で語った。「国民投票後(ギリシャにとって)状況は悪くなると予告したが、その通りになった」(共同/SANKEI EXPRESS)