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【ギリシャ危機】ギリシャ、新提案へ EU首脳会議で精査
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7月6日、ギリシャの首都アテネの銀行に入ろうとして、行員(左)と言い争いになる年金受給者=2015年(ロイター) 欧州連合(EU)は7日、財政危機に陥ったギリシャ向け金融支援交渉の再開の是非を協議するためユーロ圏財務相会合を開いた。緊急のユーロ圏首脳会議も7日開く。EU側は、ギリシャのアレクシス・チプラス首相(40)が提示する新たな財政再建策を精査した上で交渉入りの是非を判断するとしており、再建策の内容が最大の焦点となる。
首脳、財務相は、EUなどが支援条件とする再建策の賛否を問う5日のギリシャの国民投票で反対派が勝利したことを受け、対応を協議することにした。
EU側が再建策を不十分と判断して交渉入りを拒否すれば、ギリシャの財政は破綻して、国債の償還ができなくなるなど、デフォルト(債務不履行)が相次いで、ユーロ圏離脱を迫られる事態も想定される。首脳らの協議の行方は、欧州単一通貨ユーロの将来を左右しそうだ。
EU側のこれまでの支援は1日に失効した。チプラス氏は失効直前に今後2年間の新たな支援と債務削減をEU側に求めたが、ユーロ圏の財務相らは国民投票の結果が出るまで協議しないことを決めていた。
チプラス氏は国民投票の翌日の6日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(60)に対し、ユーロ圏首脳会議に新たな財政再建策を提案すると伝達。フランスのフランソワ・オランド大統領(60)と会談したメルケル氏は6日、新たな支援交渉を始めるには「真剣な提案」が必要だと訴えた。
欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で、ギリシャの銀行が緊急融資を受ける際に差し出す担保の価値を引き下げることを決めた。ギリシャが事実上の債務不履行に陥り、担保となる国債などの市場価格が下がったため。ギリシャ中央銀行が増額を要請していた緊急融資枠の規模を現行の890億ユーロ(約12兆円)で維持。ギリシャに支援協議での早期合意を迫る形となった。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪「ドイツは肯定」 深まる相互不信≫
ギリシャが5日の国民投票で、EUの財政支援策に反対を突き付けた。首都アテネでは市民が街頭に繰り出し歓喜の声を上げる一方で、ギリシャ支援の最大拠出国として緊縮策の堅持を迫ってきたドイツでは怒りと失望が渦巻く。両国民の間で相互不信と対立が増幅している。
「ドイツの政治家はギリシャを破壊に導こうとしている」。低所得者が多いアテネのセポヤ地区。国民投票に反対票を投じた年金受給者のハリストフェ・ペトロさん(64)は息巻いた。
欧州一の経済力を誇り、EUの屋台骨を支えるドイツ。ペトロさんら反対派の国民にとっては、緊縮財政を押し付ける「元凶」だ。年金や社会保障費の減額など厳しさを増すギリシャの市民生活。特に若年層の失業率は約50%とEU域内最悪で、鬱積した不満は豊かなドイツに向けられる。
アテネ中心部のシンタグマ広場で、反対派の男性銀行員(42)は「ドイツの振る舞いは欧州の皇帝のようだ。ギリシャ経済回復の時間的余裕を与えてほしい」と吐き捨てるように言った。
両国の確執は第二次大戦中にギリシャを占領したナチス・ドイツの歴史問題にも及ぶ。反対派の中には当時の抵抗組織の流れをくむグループもあり、ギリシャのチプラス政権は1月の就任直後、占領に伴う損害賠償を求める考えを示唆し、ドイツ政府は反発で応じた。
「危険な大勝利」「ギリシャ、ユーロ圏からの離脱を自ら選択」
ドイツ各紙はギリシャ国民投票の結果を厳しい目線で伝え、ギリシャのユーロ圏からの離脱が極めて現実的なものになったと指摘した。ドイツ国民の税金を支援に回してきたにもかかわらず、感謝どころか反発を強めるギリシャへのいらだちを反映した形だ。
ドイツ国民の対ギリシャ感情は悪化を続け、公共テレビZDFの世論調査では1月時点で55%がギリシャのユーロ圏残留を支持していたが、今月3日の調査では残留支持は41%に低下。逆に52%が離脱するべきだと答えた。
ギリシャが実際にユーロ圏から離脱すれば、ユーロの信認は揺らぎ、影響はドイツにも跳ね返ってくる。メルケル首相はEU各国と対応を協議するが、与党内からは「もう二度とギリシャの支援延長に賛成しない」との声が相次いでいる。(共同/SANKEI EXPRESS)