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【ギリシャ危機】予想外の大差 きょうユーロ圏緊急首脳会議

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【ギリシャ危機】予想外の大差 きょうユーロ圏緊急首脳会議

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ギリシャの国民投票で財政再建策への「反対」が多数を占め、勝利宣言を行うアレクシス・チプラス首相の演説をテレビで見る支持者ら=2015年7月5日、ギリシャ・首都アテネ(ロイター)  欧州連合(EU)などが求める財政再建策への賛否を問うギリシャの国民投票が5日行われ、投開票の結果、反対が61.31%、賛成は38.69%となり、予想に反し大差で反対派が勝利した。投票率は62.5%だった。反対への投票を呼びかけていたチプラス首相は5日深夜、開票終了を待たずに勝利宣言した。EU側は態度を硬化させ、ギリシャが財政破綻し、ユーロ圏離脱やEU脱退に至る懸念が現実味を増している。

 年金削減や増税など緊縮財政を求める再建策に反発するチプラス氏は、5日深夜のテレビ演説で、「民主主義は脅迫に打ち勝った」と述べた。

 賛成を呼びかけてきた野党、新民主主義党(ND)党首のサマラス前首相は党首辞任の意向を表明した。

 国民投票の終了を受け、EUのトゥスク大統領は5日、今後の対応を話し合うためユーロ圏首脳会議を7日に開くと明らかにした。ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領らが開催を呼びかけた。

 ユーロ圏離脱が現実となれば、1999年の単一通貨ユーロ導入以来、初の事態となる。

 ギリシャは6月末が期限だったIMFへの債務返済が滞り、IMFはギリシャを「延滞国」と認定した。今月中に満期を迎える円建て債券(サムライ債)や国債の償還ができず、デフォルト(債務不履行)が相次ぐことも懸念される。

 チプラス氏は、ギリシャがユーロ圏を離脱することはないと強調し、「6日からEU側との交渉に入る」と述べた。投票結果を盾に、EU側に譲歩を迫る考えだ。

 こうした中、チプラス氏の側近であるバルファキス財務相が6日朝、突然辞任を発表した。バルファキス氏と他のユーロ圏財務相との関係が悪化しており、辞任で欧州側が軟化することをチプラス氏が狙ったものとみられる。

 バルファキス氏は先週、EUの要求はギリシャ国民への「テロ行為だ」と非難、EU側の強い反発を招いていた。(アテネ 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

 ≪強硬姿勢拍車 民意を盾に譲歩迫る≫

 ギリシャの国民投票で財政再建策が拒否されたことを受け、EU側はドイツ、フランスを中心に対応に乗り出した。反対派が予想を上回る大差で勝利し、ギリシャが強硬姿勢を強めるのは確実となる中、金融支援をめぐる交渉は一段と難しくなる可能性が高く、EUは戦略の見直しを迫られている。

 メルケル独首相とオランド仏大統領は5日夜、電話会談し国民投票の結果について「尊重されるべきだ」との認識で一致した。両首脳は6日もパリで会談。これまでギリシャのチプラス首相と直接協議を行うなどギリシャ問題への対応を主導してきた両首脳は、7日に緊急開催されるユーロ圏首脳会議と財務相会合に先立って意見を調整するとみられる。

 「離脱」に現実味

 財務相会合のデイセルブルム議長は6日、「ギリシャ側の新たな提案を期待する」と表明。フランスのサパン財政相は「真剣な対話が行われるかはギリシャ次第」とし、EU側は協議に応じるが、まずギリシャ側の姿勢を見極める考えだ。

 ただ、協議が再開されても、交渉の先行きは予断を許さない。EU側は、国民投票で財政再建策への反対は、ギリシャの「ユーロ圏離脱」を招くとし、ギリシャ国民に再建策への賛成を呼びかけたが、結果は“敗北”。ギリシャ側は民意を盾に強い姿勢で交渉に臨み、債務削減も求めてくるとみられている。

 一方、EU内には投票結果を受けた対応をめぐり、温度差もある。「ギリシャには第3次支援を求める権利がある」(スペインのデギンドス経済相)と支援協議に前向きな姿勢を示す声が上がる一方、「ギリシャが構造改革の実行を確約しなければならない」(フィンランドのストゥッブ財務相)と、引き続き厳しい態度の国もみられる。

 ただ、交渉が決裂すればギリシャは支援を受けられないまま財政破綻し、ユーロ圏離脱の現実味も一段と増す。離脱となればユーロの信認は大きく揺らぐ。

 鍵握るECB

 ギリシャの命運の鍵を握るのは欧州中央銀行(ECB)だ。ギリシャ国内の銀行は経営破綻の危機にひんしており、営業を停止し、預金引き出し額も1日60ユーロに制限されている。それでも預金流出が続き、手元資金は底をつきつつある。

 こうした銀行の資金繰りを支えているのが、ELAと呼ぶECBの緊急支援枠。各国の中央銀行が、国債などを担保にして民間銀行にお金を融資する仕組みで、ECB理事会が認めなければ実施できない。ギリシャ向け緊急支援枠の上限は現在約890億ユーロ(約12兆円)だ。

 ギリシャはECBが保有する自国の国債約35億ユーロの償還期限を20日に迎える。だが緊急支援枠の増額がなければ、償還できない可能性がある。英紙フィナンシャル・タイムズは「次の重要日程は20日だ」と伝えた。(ボン 宮下日出男、経済部 藤原章裕/SANKEI EXPRESS

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