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【ギリシャ危機】ギリシャ国民投票実施 首相「脅迫に勝つ」 「朝が怖い」 重い選択の結末は…
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大勢の報道陣が見守るなか、投票するアレクシス・チプラス首相=2015年7月5日、ギリシャ・首都アテネ(ロイター) ギリシャで5日、金融支援の条件として欧州連合(EU)などが求める財政再建策への賛否を問う国民投票が行われた。反対多数なら支援は遠のき、ギリシャのユーロ圏離脱やEU脱退という最悪の事態も予想され、世界経済の動揺は不可避だ。賛成多数の場合も、チプラス首相への不信任を意味し、政局が混乱する恐れがある。
有権者数は18歳以上の約985万人。事前の世論調査では賛成と反対の差は1ポイント程度と拮抗(きっこう)した。即日開票による結果の大勢判明は5日深夜(日本時間6日朝)の見込みだが、大接戦となり確定に時間がかかる可能性がある。
いずれの結果でも財政再建の道は険しく、ギリシャ国民には重い負担がのしかかる。
反対多数で再建策が拒否されれば、チプラス氏は世論を後ろ盾にEU側に譲歩を迫る考え。チプラス氏はアテネ市内で投票を終えた後、「今日は民主政治が(EUの)脅迫に勝つ日だ」と記者団に語った。
一方、EUのシュルツ欧州議会議長は反対多数なら「ギリシャはユーロ圏を出て行き、新通貨の導入を迫られる」とドイツメディアに発言し、チプラス氏を牽制(けんせい)。ギリシャとEUとの亀裂が深まるのは確実で、ギリシャ支援をめぐる協議の妥結は困難を伴う。
賛成多数なら、チプラス氏は退陣する意向を示唆。年金や公務員給与の不払い、銀行の連鎖破綻を回避するため、ギリシャが暫定政権を樹立し、早急にEU側との協議を進めるとの見方がある。
ギリシャは国際通貨基金(IMF)への債務返済が滞り、事実上のデフォルト(債務不履行)状態に陥っている。
≪「朝が怖い」 重い選択の結末は…≫
財政再建策への賛否を問うギリシャ国民投票は、国家と欧州の将来を左右する重い選択を国民に迫った。緊縮からの解放という理想と、支援なしでは財政は破綻寸前という現実。チプラス首相はEUを敵に回し、大衆を扇動して強硬姿勢を貫く。ユーロ圏離脱が現実味を帯びる中、国民は迷走する「チプラス劇場」の結末におびえている。
「苦しくても我慢するしか道はない」。アテネ市内の化粧品販売員、バシリキ・チアミさん(35)はEU案に賛成の立場だ。どちらに転んでも苦境に変わりはないと悲観しながらも、ユーロ圏残留にわずかな望みをつなぐ。世論調査では賛否が拮抗(きっこう)しており、結果が出る6日の「朝が怖い」とうなだれた。
チプラス氏が6月27日に国民投票実施を電撃表明して以降、状況は一変した。29日には政府がそれまで否定してきた資本規制が導入され、銀行は閉鎖、預金引き出しや海外送金も制限された。国民は財政危機の現実を肌で感じるようになり、一気に不安が広がった。
装飾品販売店を営むリウさん(48)は「仕入れはすべて現金で支払わなければならず、経営に大きな支障が出ている」といらだつ。「チプラスは嘘つきだ」。首相に見切りを付け、再建策受け入れへの支持を決めた。
ギリシャでは若年層の失業率は約50%と高止まりし、年金で家計を支える世帯も多い。年金支出の抑制を求めるEU案に貧困層は「銃を突き付けられているようだ」と悲鳴を上げる。首都アテネ市の貧困地区で、年金生活者の多くは「今でもどん底の生活」「これ以上、何も失うものはない」とまくし立て、EUの再建案には断固反対すると口々に訴えた。
「緊縮策破棄」を掲げて1月に政権を握ったチプラス氏は、過去5年間の厳しい緊縮策が「人道危機」をもたらしたと主張。増税や年金改革を柱としたEU側の再建案をはねつけた。
政権発足当初は「双方が強い姿勢で臨んでも、妥協点を探り最終的には合意に達する」(国立アテネ・パンディオス大のコンドヨルギス教授)などと、多くの人が楽観的な見方だったが、チプラス氏は欧州の秩序を攪乱(かくらん)するのが狙いであるかのように、過激な発言をエスカレートさせた。
「欧州の脅迫に対する勝利を祝おう」。国民投票が迫った3日夜、チプラス氏はアテネ市内での反緊縮派の大規模集会で演説し、「反対」を連呼し熱狂する群衆に拳を高く上げて応じた。集まった支持者はチプラス氏を「英雄」「革命家」とたたえた。
歴代政権の放漫財政の果てに、危機に陥ったギリシャ。EU側が強いる緊縮策で、国民は仕事も尊厳も失い耐乏生活は限界に達していた。貧困層や将来を悲観する若者は、キューバ革命を成し遂げたチェ・ゲバラを信奉する若きチプラス氏に国の命運を預けた。
果敢にEU側に挑むチプラス氏に、支持者の多くが「尊厳の回復」を感じた。しかし、チプラス氏の“瀬戸際戦術”はEUとの支援協議では通用しなかった。
ギリシャ主要紙カティメリニのアレクシス・パパヘラス編集長は「(チプラス氏が)EUとの関係に火を付けた」と述べ「国民投票で賛成することだけがギリシャ(という船)を安全な港に導く」と指摘した。