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【ギリシャ危機】資本規制 ギリシャ国民に不安広がる デフォルトは国民生活に大打撃

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【ギリシャ危機】資本規制 ギリシャ国民に不安広がる デフォルトは国民生活に大打撃

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シャッターの閉まった銀行の前で、通常は月末に支給される年金の支払を待つ受給者たち=2015年6月29日、ギリシャ・首都アテネ(AP)  「いつ正常に戻るのか」。ギリシャの銀行が営業停止となった29日、アテネ中心部の主要銀行はシャッターが閉じられたまま。多くの人は既に預金を引き出すなど「自己防衛」しているが、「とにかく情報が欲しい」と途方に暮れて銀行前に座り込む市民の姿もあった。

 地元メディアによると、銀行周辺で暴動が起きる可能性もあるとして、ギリシャ政府は非番も含めた全警官に厳戒態勢を取るよう指示した。

 「全ての機能が止まっている。クレジットカードで決済された売上金がいつ手に入るのかわからない」。アテネ中心部で土産物店を営むパナヨーティス・ボリアスさん(52)は不安な表情。「こんな状況は初めて。困っていないギリシャ人はいない」。政府の対応に失望感をあらわにした。

 チプラス首相が28日夜に突如発表した資本規制の導入で、現金自動預払機(ATM)での現金引き出しは29日朝、できなくなっていたが、午後には一部の銀行で利用可能になり、市民が行列をつくった。

 銀行の窓口で年金を受け取る人たちには、休業の影響が直撃。母親が入院中という男性は地元テレビに対し「介護人の給与を支払わなければならないが、年金を受け取れずに困っている」と、戸惑った様子で話した。

 英ロンドンの金融街シティーでも不安が広がった。邦銀のディーラーは不測の事態に備えて普段より早く出勤。「現地の状況がよく分からず、情報収集に努めている」と慌ただしく語った。別の邦銀関係者も「ギリシャがユーロ圏を離脱すれば、他の南欧諸国に波及する恐れもある」と不安そう。ただ「ギリシャの問題はずっと続いており、ギリシャに投資している人はもう少ない。われわれも心構えはできている」とも述べた。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪デフォルトは国民生活に大打撃≫

 欧州連合(EU)が今月末に期限を迎えるギリシャに対する金融支援の延長拒否を決めたことで、同国がデフォルト(債務不履行)に陥る恐れが高まっている。

 Q 延長拒否の理由は

 A ギリシャは、EUが支援の条件として求めていた財政緊縮策の是非をめぐって、7月5日に国民投票を実施します。EUは国民投票に反対していたのに、ギリシャ国会が28日に承認しました。ギリシャは30日までに国際通貨基金(IMF)に対し16億ユーロ(約2200億円)の債務を返済しなければいけませんが、手元資金は底を突きかけています。

 Q デフォルトは避けられないのですか

 A EUはギリシャと財政再建策に関する合意がない限り、融資を再開しない方針です。ギリシャは7、8月にも巨額の国債償還を控えています。市場からの資金調達が事実上できないため、支援がなければ避けられません。

 Q デフォルトになった場合は

 A ギリシャ政府は、IMFなどへの返済だけではなく、公務員の給与や年金なども支払えなくなって、国民生活が大打撃を受ける可能性があります。銀行の経営が揺らぎ、民間企業の業績にも悪影響がありそうです。ユーロが枯渇してしまって、旧通貨ドラクマを復活させてユーロ圏を離脱せざるを得なくなるかもしれません。

 Q 国民投票では何を決めるのですか

 A EU側が求める年金改革や、消費税に当たる付加価値税の増額を受け入れるかどうかです。チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)は緊縮策の破棄を訴えて政権に就いたため、公約に背く再建策の賛否を国民に直接問うことにしました。

 Q 結果の見通しは

 A ギリシャ国民の多くがユーロ圏残留を望んでいる一方、緊縮策への反発も強いため、予測は困難です。

 Q 再建策の受け入れを決めた場合は

 A EU側との協議を再開する予定です。ただ、30日が期限のEUによる支援の枠組みや、IMFへの返済がどうなるのかは現時点で不明です。

 Q 否決した場合は

 A 別の再建策をEU側に求めるとみられますが、EU側との対立が深まります。このため国民投票にはユーロ圏残留の賛否を問う意味合いもあると指摘されています。(共同/SANKEI EXPRESS

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