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五輪の海浄化「達成は不可能」 リオ、セーリング会場 下水処理計画が頓挫
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8月8日、リオデジャネイロ五輪のセーリング競技の会場となっているグアナバラ湾で、水質汚染対策を十分に行わない当局の怠慢に抗議し、カヌーやボートで繰り出してデモを行う人々=2015年、ブラジル・リオデジャネイロ(AP) 南米大陸で初開催となるブラジル・リオデジャネイロ五輪まで1年を切ったなか、セーリングの競技会場の深刻な水質汚染問題がクローズアップされ、8日、多数のヨットや漁船が海上に集結し、対策を怠っているとして当局に抗議するデモが現地で行われた。AP通信が独自に行った調査では「スプーン3杯分の水が選手の体内に入ればウイルスに感染する危険性は99%」などとする結果が出ており、国際オリンピック委員会(IOC)も世界保健機関(WHO)からの要請を受けて、リオの関係当局に水中のウイルス分析を命じた。
セーリング競技は、リオ東部、コパカバーナ地区のグアナバラ湾で行われる。世界三大美港に挙げられる景観を誇るが、岸辺に立つと、どぶのような異臭が鼻を突く。約380平方キロと広大な湾には貧困地域から生活排水が未処理で流れ込み、海底油田の掘削の影響で油も浮かぶ。
五輪招致活動でリオデジャネイロ州政府は、12%程度しかなかった湾周辺の下水処理能力を2016年までに80%に高めて浄化することを公約。湾に流れ込む河川周辺の8カ所に新たに下水処理場を建設する予定だったが、この期に及んでも1カ所しか完成しておらず、計画は完全に頓挫している。
リオ州環境局の担当者も「下水処理能力の向上計画は達成不可能」(AFP通信)と白旗を上げており、昨年からはごみ回収船を投入して毎月約11トンの不法投棄物の収集に努めているが、水質は一向に改善されていないのが実情だ。
8日は十数隻以上のヨットや8隻の漁船、多数のカヌーなどが湾に繰り出し、霧笛などを鳴らしながら、参加者たちは「バイーア・ビバ(湾は生きている)」のスローガンを叫んで海上を12キロにわたって航行した。
参加者の一人で、08年北京五輪にセーリング女子470級のブラジル代表として出場し、銅メダルを獲得したイザベル・スワンさん(31)は「リオに五輪を招致できたのは良かった。そして今度は、将来に五輪のレガシー(遺産)を残すことが大事なのに、現状はそれ以前の問題で世界に恥をさらしている。市や州政府の行政の腐敗は目を覆うばかりで、国にもっと強力な関与を迫って急場をしのぐしかない」などと地元メディアに語った。
デモを主導した環境活動家のセルジオ・リカルド氏も「公約は最初から口先だけだった。今では湾の底には1メートル以上のプラスチックごみの層ができている箇所がある」と憤った。
AP通信は先月、専門家に依頼して5カ月間にわたって行った水質調査の結果を公表。それによると、嘔吐(おうと)や下痢、時には脳や心臓の疾患の原因になるヒトアデノウイルスが高い数値で検出された。これは「ほぼ下水と同等」のレベルで、1リットル当たり17億個が検出された場所もあったという。米国では1リットル当たり1000個なら警告が出され、遊泳が禁止されるレベルだ。医療関係者はブラジル人に比べ、免疫がない外国選手により重い症状が出る可能性を指摘している。
大会組織委当局者は「これまでも水質の検査を続け、常に国際基準をパスしている。競技に支障はない」と反論しているが、ブラジルの水質検査は大腸菌群などが中心で、ウイルスは対象外になっている。
五輪を前に、15日から現地でセーリングのテスト大会が行われる。選手たちからは「きれいな海で戦いたい」と水質改善を求める声が相次いでいるが、要望に応えられる見通しは全く立っていない。(SANKEI EXPRESS)