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違法薬物「売買したら死刑」 息子が実刑、J・チェンさん苦悩の表明

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違法薬物「売買したら死刑」 息子が実刑、J・チェンさん苦悩の表明

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違法薬物撲滅をアピールするため学生たちが作成したゲームアプリの発表イベントに出席し、歓迎されるジャッキー・チェンさん=2015年5月7日、シンガポールの南洋理工大学(ロイター)  香港を代表するアクションスター、ジャッキー・チェンさん(61)が7日、シンガポールの違法薬物撲滅大使に任命され、その記者会見で違法薬物絡みの犯罪を一掃するため「死刑を支持する」と表明し、注目を集めている。昨年、一人息子のジェイシーさん(32)が麻薬絡みの犯罪に手を貸し、実刑判決を受けた経験を持つチェンさんは「違法薬物は当人だけでなく家族も傷つける」と訴え、“極刑やむなし”の姿勢をアピールした。違法薬物に絡む死刑執行や死刑制度そのものをめぐる国家間の対立が強まる中、家族の体験を元にしたチェンさんの主張は、違法薬物と死刑をめぐる論議に一石を投じることになった。

 シンガポールの撲滅大使に

 「いくつかの問題から、私は死刑を支持する」「何千人もの子供たちを傷つけるような類の人間は役立たずで、しかるべき罰則を与えるべきだ」

 英BBC放送やロイター通信によると、チェンさんは会見で英語と中国語の両方を駆使し、厳しい表現で違法薬物の売買に対する死刑支持を訴えた。

 チェンさんは2009年、中国政府から違法薬物撲滅大使に任命され、違法薬物の一掃と使用者への厳罰を求めた習近平国家主席(61)の声明を支持した。以来、違法薬物撲滅のキャンペーンに積極参加しており、その関係でシンガポール初の芸能人の撲滅大使に任命された。中国とシンガポールは違法薬物の売買や密輸には死刑を含む厳罰を適用している。

 チェンさんがこの問題に一段と積極的に取り組むようになった理由がもう一つある。世界を騒がせた息子、ジェイシーさんの一件だ。

 ジェイシーさんは昨年8月、他人が麻薬を使用する場所を提供した罪に問われた。ジェイシーさんの部屋からは100グラムのマリフアナが発見され、ジェイシーさん自身、マリフアナ検査で陽性反応が出た。今年1月、懲役6月の実刑判決を受け、未決勾留日数が刑期に算入されたため、今年2月に出所した。

 人道的見地から反対も

 7日の会見で息子の事件を振り返ったチェンさんは「自分の家族に起きたことだと信じられなかった。事件が分かった日、私は非常に恥ずかしく、そして『いったい何がどうなっているんだ』と怒った。そして、強い怒りは、私に違法薬物に反対する決心を固めさせていった」と述べ、当時の苦悩を吐露した。

 さらに若者の違法薬物使用について「彼らは『大丈夫。たばこみたいなものだから』と言うが、自分は依存症にはならないと考えてはいけない。(薬物を買う)金のために、盗みや強盗をやる。そのあげく、あなたの国や家族を傷つける。それはドミノだ」と切々と訴え、若者に違法薬物を提供する売買行為への死刑支持を表明した。

 とはいえ、違法薬物の売買や密輸に関わらず、人道的な見地から死刑制度に反対する国々もある。先月末にはインドネシアで麻薬密輸などの罪で収監されていたオーストラリア人やブラジル人など外国人8人の死刑が執行され、オーストラリアやブラジルの政府当局が抗議した。とりわけ1985年に死刑制度を廃止したオーストラリアのトニー・アボット首相(57)は刑の執行後「死刑は残酷で不必要」と怒り、駐インドネシア大使の召還を発表するなど、外交問題に発展している。

 チェンさんの死刑支持発言は、国境を超えた違法薬物の広がりから死刑制度の是非まで、多くの論点を改めて浮かび上がらせる結果となった。(SANKEI EXPRESS

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