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「全員殺した」番組収録中にトイレで自白 米富豪を訴追、マイク切り忘れ
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殺人容疑で逮捕・訴追されたロバート・ダースト容疑者(右から3人目)。自ら出演したドキュメンタリー番組でうっかり過去の殺人を“自白”してしまったことで逮捕された=2014年12月10日、米ニューヨーク(ロイター) 妻と友人の殺害疑惑をかけられていた米ニューヨークの大富豪の男が、自ら出演したドキュメンタリー番組の収録時に殺人を“自白”したことがきっかけで逮捕・訴追され、全米が騒然となっている。トイレでワイヤレスマイクのスイッチを入れたまま、「全員殺したんだよ」とつぶやいた独り言が録音され、番組で放送された。うっかりスイッチを切り忘れていたとみられる。起訴され裁判で有罪になれば死刑の可能性もある。ただ、トイレでの独り言に証拠能力があるかどうかをめぐって論争も巻き起こっている。
ニューヨーク・タイムズ紙やCBSテレビ、CNNなどの主要メディアが17日までに一斉に報じた。それによると、逮捕・訴追されたのは、ニューヨークの著名な不動産王の息子、ロバート・ダースト容疑者(71)。父親の死で44億ドル(約5400億円)の遺産を受け継いだ億万長者だ。
ダースト容疑者は14日、友人だった女性推理作家、スーザン・バーマンさんが2000年にロサンゼルスで射殺された事件の容疑者として、偽名で宿泊していたルイジアナ州ニューオーリンズのホテルで逮捕され、16日に起訴するかどうかを判断する訴追の手続きがとられた。逮捕後は、容疑を否認しているという。
ダースト容疑者をめぐっては1982年に妻のキャスリーンさんが行方不明となっている。バーマンさんは射殺翌日に、キャスリーンさん失踪について捜査当局の事情聴取に応じる予定になっており、当時から2つの事件へのダースト容疑者の関与が疑われていた。
ダースト容疑者は2001年に隣人男性を殺害しバラバラにして遺棄した罪で逮捕・起訴されたが、正当防衛を主張し無罪が言い渡された過去もある。
射殺事件から15年後の逮捕のきっかけは、米ケーブルテレビ局HBOが製作した、疑惑を追及するドキュメンタリー番組「悪運-ロバート・ダーストの人生と死者たち」(全6回)。逮捕翌日の15日に放送された最終回で衝撃の“自白”が流された。ダースト容疑者は番組のインタビューで疑惑を否定していたが、その後、トイレで「俺が何をしたかって? 全員殺したんだよ。もちろんな」とつぶやいた。
番組を収録していた2年前に録音されたもので、製作を手掛けたアンドリュー・ジャレッキー監督が数カ月前に偶然発見し警察に提出。これが逮捕のきっかけになったという。ジャレッキー監督はCBSの取材に「(自白は)とても恐ろしく、聞く者を不快にさせる」などと語った。また、「われわれはいつも彼にマイクを付けており、彼もそれを知っていてトイレに行った」と述べ、真実の告白だった可能性にも言及した。
ただ、録音の証拠能力について、専門家の意見は分かれている。米フォーダム大学の法学教授ジェームズ・コーエン氏はCBSに、「(彼を起訴するための)非常に強力な証拠になる」との見方を示した。
一方、有名なO・J・シンプソン事件で無罪を勝ち取った弁護団のメンバーで米ハーバード・ロー・スクール教授であるアラン・ダーショウィッツ弁護士は、ネットテレビニュースCBSNで「単に曖昧な発言とみなされる。弁護側は精神不安定時の発言と主張するだろう」などと語り、裁判で有罪となる可能性は低いとの見方を示した。(SANKEI EXPRESS)