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首相・岡田氏側にも献金 補助金交付企業から 政治不信危惧も 全面禁止に尻込み
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衆院予算委員会で民主党の枝野幸男(ゆきお)幹事長の質問に答える安倍晋三(しんぞう)首相=2015年3月3日午前、国会・衆院第1委員室(酒巻俊介撮影) 安倍晋三首相(60)が代表を務める政党支部が2011~13年、国の補助金交付が決定していた広告大手「電通」(東京)など3社から計約200万円の献金を受け、民主党の岡田克也代表(61)が代表を務める政党支部も、副総理就任時期を含む11、12年、子会社への補助金交付が決まっていた食品大手「日清製粉グループ」(東京)から計48万円を受けたことが3日、分かった。政治資金規正法は国の補助金交付決定通知から1年以内の政党や政治資金団体への寄付を禁じている。ただし「試験研究、災害復旧、その他受給側に利益とならない」補助金などは例外とされる。また、政治家側は交付決定を知らなければ刑事責任を問われない。
安倍氏が代表を務める「自民党山口県第4選挙区支部」の政治資金収支報告書によると、11~13年、農林水産省の補助金交付が決まっていた電通から計30万円の献金を受けた。他に化学大手「宇部興産」(東京)や化学機器「東西化学産業」(大阪)も献金した。電通は「例外規定に該当する」と説明。安倍氏は「補助金交付は知らなかった」としている。
岡田氏については、「民主党三重県第3区総支部」の報告書によると、11、12年の各6月に日清製粉グループから計48万円を受領。子会社「日清製粉」は各4月、農水省からの補助金交付が決定していた。日清製粉グループ本社は「規正法の例外規定に当たる」。岡田氏側は「別法人なので違法性はない」と説明している。同様の寄付は林芳正(はやし・よしまさ)農相(54)や甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相(65)の各政党支部でも判明した。
≪政治不信危惧も 全面禁止に尻込み≫
安倍首相や民主党の岡田代表ら与野党議員に3日、相次いで企業・団体献金をめぐる疑惑が浮上し、国会は泥沼の様相を呈してきた。各党とも改善の意向を示すが、全面禁止を決めたのは維新の党だけ。閣僚らを追及してきた民主党も全面禁止にはためらいがあり、抜本的な見直しに向けた機運は盛り上がっていない。
「正直な話、これ以上は対応のとりようがない…」
補助金交付決定の会社からの献金が明らかになった甘利(あまり)経済再生担当相は3日の記者会見で、こうつぶやいた。甘利氏側は補助金決定から1年以内の献金が禁止されている政治資金規正法の規定を会社側に説明していた。それでも防止できなかったことへのやりきれなさがにじんだ。
民主党も岡田氏の献金問題が発覚し、枝野幸男(ゆきお)幹事長(50)は記者団に「こういうことを長く繰り返せば、ますます国民の政治不信を高める」と述べ、献金する会社側が違反した場合の罰則強化などを検討する考えを示した。党国対幹部も「(政治資金の)仕組みをどうするかといった前向きな話をする必要がある」と語る。
民主党は政治資金の問題で閣僚らを厳しく追及してきたが、トーンは弱まりつつある。背景には、世論が「与党も野党も同類」とみているとの危機感がある。
岡田氏は3日、産経新聞などが献金問題を報じたことに対し「誤解を招きかねない」との談話を発表し、政治資金規正法で禁じた献金には当たらないと主張した。だが、補助金交付の決定を知っていたか否か、利益を生む補助金か否かといった規正法の解釈は曖昧で分かりにくい。
首相は3日の衆院予算委員会で「規制のあり方は各党で議論していただくべき問題だ」と指摘した。「企業・団体献金そのものがいけないとは考えていない」とも明言し、全面禁止に否定的な姿勢を示した。自民党の谷垣禎一(さだかず)幹事長(69)も記者会見で「条文への習熟が必要だ」とし、運用改善や党のチェック機能強化などで対応する考えを示した。
民主党も全面禁止には二の足を踏む。2009年の衆院選の公約で全面禁止を掲げ、禁止法案を提出した過去もあるが、今も多くの議員が献金を受けている。予算委で「本来は企業・団体献金をやめるべきだ」と述べた枝野氏も記者団には「疑義を持たれる献金が行われないようにすることが必要だ」と語っている。
一方、今年2月の党大会で、来年から企業・団体献金の受け取りの全面禁止を決めた維新には追い風となっている。柿沢未途(みと)政調会長(44)ら党幹部にも献金問題が発覚したとはいえ、松野頼久幹事長(54)は記者会見で「根っこから問題を断つために献金の受け取りを禁止した」と胸を張った。(SANKEI EXPRESS)